イベントにおける「予定調和ではない」という予定調和

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 ワークショップとか、参加型イベントというものに「参加」する事があります。また、完全にオープンな場ではありませんが、そういった場をデザインすることもあります。そういったときに、感じる「難しさ」というものがあります。それは、”「予定調和ではない」という予定調和”をいかに脱するかということです。

参加者からの声

 あるイベントに参加したときのことです。イベント終了後、ある参加者同士(たぶん、上司と部下)の会話が聞こえてきました。

 「いやー、今日も○○先生の切れ味は抜群だったなぁ。おまえ、あの話わかったか?」
 上司が部下にこう語り掛けていました。

 実はこれ、皮肉以外のなにものでもなかったのです。
 このときのイベントのテーマは、簡単に言えば、「上司がものを知っていて、部下が知らない」という状態をベースとした「導管モデル」的な研修なり育成というのは、成り立たないのではないか。(上司は)成り立っていると思っているが、実は、成り立っていないのではないかという話だったからです。

 部下の視線と発言が印象的です。
 「おまえのことだよ」という目をしながら、「いやー、自分には難しかったですね」と。

プロレス的な「ガチ(本気)」

 この参加者を否定している訳ではありません。それこそが、崩さなければならない「思考の枠」であり、狙いは当たっているのです。しかし、この参加者は、「こういったイベントに来ている自分」=「予定調和から脱した人」と思っている部分があるのです。ですから、何も崩されていないまま終わりました。

 さて、ではこの参加者はイベントを楽しめたのでしょうか。きっと、楽しめたのだと思います。とても、満足そうな顔をしていました。イベントは、参加型ですから、参加者同士が話す場はたくさんあります。

 「普段の研修では、話を聞くだけだが、やっぱりこういう場は違うよな」
 という反応は、様々な場所であります。「話す」ことの満足感は大きい訳です。

 また、「今日も切れ味抜群だったな」という発言があるように、ある先生には「切れ味」を期待しているのです。「切れ味」を期待していることは、自分にはない視点を提供してもらいたいわけであり、「何かを教えてもらいに」来ているのです。決して、「参加して気付き」に「本気で思って」来ている訳ではないのです。

 それはある意味で、「プロレス」的な世界です。悪役レスラーは、悪い人ではありません。興業のことをよく考え、「致命的な怪我」をしない程度で、観客が興奮するギリギリの所を狙うという「役」を演じているのです。

 その一連のやりとりを見て、満足するのは、極めて「当たり前」だよなと思います。

で、何よ?

 なんらかのイベントでは、確かに「予定調和ではない」という状況を作り出したい訳です。そうしなければ、凝り固まった考えを変えることはできないでしょう。しかし、参加者が「予定調和ではない」ものを期待した時点で、プロレス的な世界になり、”「予定調和ではない」という予定調和”に陥ってしまうのではないかと思います。

 だからこそ、もう一度「予定調和」もありなのかと思います。「予定調和ですよ」「楽しくはないので、期待しないでね」と言いながら、プログラムの中では「脱予定調和」になるように積極的に仕掛けるということが必要になるのではないかと思います。

 また、「参加型」ということでも「参加者」に過度に期待することをせず、ましてや「失敗したことを参加者の責任にせず」に、できる限り主催者側で「デザイン」していく姿勢が必要なのではないかと思います。デザインする対象は、環境であり、アクティビティであり様々ですが、参加者に「訴えかける」部分だったり、「仕掛ける」部分であって、「参加者自身ではない」のだと思います。

 自分は、狙うべきは、ビートたけしが作ったとされる「赤信号みんなで渡れば怖くない」というようなひと言なのかと思っています。もし、イベントの中で、「自分が何らかの規範や枠」に捕らわれていたなと気付く「一瞬」さえあれば、そのイベントは成功なのではないかと思います。

 それは、外見をしっかりと整えて、「参加者が満足するテクニック」を満載させた「お茶を濁すだけの」イベントより、よっぽど価値があるのではないかと考えています。

 まあ、そういった意味でいえば、ここに書いたようなものは、「ワークショップ」ではなく、「研修」と呼ぶべきなのかなと思います。ワークショップは、もう少し良い意味で「ほったらかす」ことを重視しているように思うからです。

 PS:今、イベントでのプログラムを考えています。その際、参加者のことを想定しながら作る訳ですが、多様であればあるほど難しいですし、「慣れている人」が多いというのも、「また難しい」です。
 その意味で、「なんらかのサプライズ」をしてくると予想される場面で、それを超えるサプライズを演出してきた「スティーブジョブズ」は、改めて凄いなと思いました。
 
 私の場合には、「期待しないで下さい」というのが精一杯です。

 追記:本当に予定調和を崩すのだったら、「悪役レスラー」には、「いい人」を無理矢理演じさせたりすると面白いですかね。

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2021年瑞木祭 11/7
#バーチャル道灌まつり
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この記事を書いた人
橋本 諭

産業能率大学情報マネジメント学部 准教授 橋本諭(はしもと さとし)。
研究テーマは、ソーシャルビジネス、人材育成を扱っています。

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