2025年橋本ゼミのテーマは「サードプレイス」

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橋本ゼミでは毎年、テーマを掲げて活動を行っています。今年2025年のテーマは、「サードプレイス」を取り上げます。レイ・オルデンバーグが1989年に発表した「The Great Good Place」の中で提唱した概念ですが、一般にはスターバックスのマーケティングコンセプトとしての方が一般的かもしれません。

ざっくりと理解されているサードプレイス

サードプレイスは、ファーストプレイスである家庭、セカンドプレイスである仕事場とは異なる場所といった形で理解されているように思います。もちろん、これはざっくり過ぎる理解です。オルデンバーグは、著書名に現れているようにThe Great Good Placeとしてサードプレイスをとらえています。邦訳では「とびきり居心地が良い場所」と訳されていますが、サードプレイスをインフォーマルな公共生活の中核的環境であると定義しています。

また、オルデンバーグは1980年代から90年代のアメリカの都市生活を対象として議論を行っています。都市と郊外、車社会の影響等々、当時のアメリカにおける様々な問題が挙げられています。もちろん時代を越える普遍性があるからこそ、いまだに注目されている訳ですが、分析される対象には時代性や地域性が表れています。例えば、以下の引用にある郵便自体がその意味を大きく変えています。

たいていの場合、わたしはそのような場所を(第一の家、第二の職場に続く)「第三の場所」と称するが、それらはインフォーマルな公共の集いの場だ。こうした場所は、あらゆる人を受け入れて地元密着であるかぎりにおいて、最もコミュニティのためになる。
サードプレイスの一番大切な機能は、近隣住民を団結させる機能だ。多くのコミュニティで、郵便局がこの機能をよく果たしていたのは、誰もがそこに郵便受けをもっていた時代であり、誰もが徒歩か車でそこまで行かなければならなかった時代だったし、当時は法律によって二四時間営業だった。椅子こそ置いていなかったが、郵便局は人びとが会って──少なくとも挨拶ていどは──言葉を交わす場所だった。(P17)

つまり、現在の日本におけるサードプレイスについて考える場合には、1980年から1990年代と2025年との時代の差、そしてアメリカと日本の差については精緻に見ていく必要があると思います。例えば、スマホの普及の一つをとってもサードプレイスへの影響はあることでしょう。

なにより、家庭や職場が大きく変化しています。特に、現代の大学生たちはインターンシップから始める実質的な就職活動は以前よりもかなり長くなっています。これはセカンドプレイスに参入するための活動だと言えます。学生からすれば、多大なコストを払うことを求めてきますが、他方で会社自体は自分たちを守ってくれる存在だと思っている人は少なくなっているでしょう。ロイヤリティが低く早期離職する若者が世間的には注目を集めますが、企業側の姿勢が変化していったことは昨今増えてきた就職氷河期世代の分析からも明らかです。

このようにサードプレイスを考える上では、自宅、職場、そして地域社会そのものがどのような状況に置かれているのかを踏まえることは必須であると思います。私たちは、MyPlayfulTownというWebメディアの運営を通じて地域について考えていますが、地域も確かに変化しています。

サードプレイスのコストは誰が支払うのか?

橋本ゼミでは、前期いくつかの本を読みながら議論を行ってきました。その一つに、「ゆるい場をつくる人々: サードプレイスを生み出す17のストーリー」があります。この本は様々な地域にあるサードプレイスを分析している本ですが、議論の中で出てきたのは中核となった人の熱い思いです。また、様々な意味でのコストをかけている姿に、「なぜ、こういった活動ができるのだろうか?」と議論になりました。

実際、サードプレイスにはコストがかかります。そのコストを誰が負担するのか?(してきているのか?)は着目すべき点だと考えます。

ゆるい場をつくる人々の議論の続きを活動を通じて考えていくことができればと思っています。

瑞木祭と辻フェス

皆様には、2025年11月8日(土)9日(日)の瑞木祭において研究発表を行うべく準備しております。一般の方々にもご来場いただけますので、ぜひたくさんの方々にお越しいただきたいと思います。また、2025年10月4日(あるいは5日)には、JR辻堂駅の駅前で行われる「辻フェス」においても研究発表を行う予定です。

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