時間を超えた「もの」を介した人材育成について ウイスキー工場見学

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 少し前ではありますが、いつか、行きたいなと思っていたウイスキー工場の見学に行ってきました。これまでビール工場は複数見学をさせてもらった事がありますので、その差も含めて興味深い点がいくつもありました。

 無知で、大変恥ずかしいのですが、たとえば「白州10年」というのは、10年「以上」寝かされた樽からブレンドして作りだすものだそうです。12年であれば、12年以上寝かせたものということですので、当然のことながら過去の資産を活かした製品作りです。

場所が育てる


 
 今回は、山梨県にあるサントリーの白州蒸留所に行ってきました。

 リンク先にあるように、白州蒸留所は自然豊かな場所です。飲料ですから、当然水がきれいな場所が選ばれます。この場所は、南アルプスの天然水の取水地でもあり、品質の高い水がとれるのです。また、10年から場合によっては数十年この地で熟成されることになりますので、「空気がきれいな場所」も必要なのだと伺いました。
 ウイスキーは、この場所が育てているのだと思います。

時間が育てる

 前述したように、ウイスキーには必ず熟成という寝かせの工程があります。その期間は、10年以上の長きにわたっています。工場内で、25年ものを試飲する機会がありましたが、熟成の時間が異なるだけで、本当に違う種類の香りだったり味になっているのだから不思議です。つまり、時間がウイスキーを育てているのです。

 一方、それを作る職人も時間が育てているのだと思います。
 たくさんある樽には、それぞれ個性があるそうです。それは、同じ時期に蒸溜したものでも、樽を保存する位置などでも異なってくるというのです。しかし、製品を市場に出す際には味や香りにブレがあってはならず、そのため、ひとつの製品として作り上げるためには、ブレンドし「整える」というのです。

 そのブレンダーという仕事について、サントリーのブレンダー輿水氏とバランタインのブレンダーヒスロップ氏の対談記事があり、バランタインのブレンダーは次のように語っています。

重要な使命を担うマスターブレンダーは、ウイスキーづくりに関わるすべての工程を把握していなければなりません。私はウイスキーの世界に入って27年になります。マスターブレンダーになったのは2005年11月からですが、それまでの20年を超す年月で、貯蔵からボトリングに至るまで、あらゆる職場を経験しました。
出典:http://www.ballantines.ne.jp/story/interview02/03.html

 同様に、サントリーの輿水氏も同様の経験があることを語っています。
 また、ひとつの製品を守るということについては、以下のような記載があります。

長く愛されてきた味わいを守るためのエネルギーは、新製品にかけるエネルギーよりはるかに大きい。それに、「継承する」とは、ただ頑なにレシピを守るということではないと思うんです。そのウイスキーを特徴付けている香りや味わいといった固有の部分は残しつつも、目に見えない部分をブラッシュアップし、常にリファインしていくことを考えなくちゃいけない。10年、20年を経て飲み比べた時に、トータルな質感というか、完成度が明らかに向上していなければなりません。この山崎蒸溜所を例にとっても、発酵槽をステンレスから木に戻したり、われわれブレンダーの意向に沿って蒸溜釜の改良を重ねていくことによって、ベースとなる原酒の品質は間違いなく上がっているわけですから。
出典:http://www.ballantines.ne.jp/story/interview02/03.html

 このように、長い時間が掛かる製品であるからこそ、また歴史ある製品であるからこそ、その育成も経験が重要であることが示されています。職人も時間が育てるのだと思いました。
 

ものが育てる

 一方、次のような視点もあるのではないかと思いました。
 それは、ものが育てるという視点です。

 ブレンドをするということは、当然過去の先輩達が作り上げたものをベースにして製品を作っていくことになります。過去の先輩達から直接に教わるということもあるかと思いますが、数十年前の人から話が聞けるのはまれでしょう。一方で、そのアウトプットである「原酒」に触れることで「間接的に教わる」ということがあるのではないかと思ったのです。

 ある年の製品はなぜこれほど品質が良いのだろう?とか、工夫をしている様が伝わってくることだったり、また逆もあったりで、「原酒」を通じたコミュニケーションがそこにあるのではないでしょうか。

感じた事

 これは、伝統的な職人の世界では一般的なことかも知れません。宮大工などの世界では、過去の建造物を修復する際に、当時の職人の技術を知ることができると言います。しかし、これは、別に伝統的な職人の世界に限ったことではないのではないかと思います。

 たとえば、営業職であったとしても、先輩が作った販促用資料を見ることによって、「何を考えて、そういった資料にしたのか」を想像することが出来ます。直接的に「教える」ことができなくても、技術だったり知識を伝えていくことは可能なのだと感じました。もちろん、それは「ただ単に」仕事をしていればうまくいくということではなく、「もの」から学べるようにする支援が必要になるのだろうと感じました。そのための仕組み作りを色々と考えている次第です。

 いずれにしても、やはり工場見学は面白い。

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この記事を書いた人

産業能率大学情報マネジメント学部 准教授 橋本諭(はしもと さとし)。
研究テーマは、ソーシャルビジネス、人材育成を扱っています。

橋本 諭

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