2025年までに全ての農業の担い手がデータを活用する

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皆さんこんにちは。11期生の山本莉貢と申します。私は苺農家の家に生まれ20年間農業を経験して育ちました。農業は今、産業革命とも呼べる程の転換期に差し掛かっています。ここで冒頭のタイトルについて紹介したいと思います。

「2025年までに全ての農業の担い手がデータを活用する」これは、農林水産省が2019年に未来投資会議に提出した書類の一文を抜粋したものになります。農林水産省が今後農業する際にデータを活用してより効率よく農業して下さいね!と発表したのです。つまり、農業をDX化して下さいと言っているのです。そこで本記事では、実際にDX化した農業を経験してみて感じた事、今後の農業の未来を考察していこうと思います。

【総労働時間2300時間をDX化により解消】

<高設栽培への移行>

私が中学生の頃、世論の農業へのイメージと実際の農業はほとんど差異が無い状態でした。1日の労働時間は平均して8時間を超え、繁忙期ともなれば12時間を超える事も珍しくなく、労働時間に対して得られる利益が一般的な社会人と比べ低かったことを覚えています。3Kとはまさに農業だったと言わざるを得ません。しかし、8年程前から苺の栽培方法を土耕栽培から高設栽培へと移行した事をきっかけにワークライフバランスが変わり始めました。(正直な話、後に紹介する環境制御型ビニールハウス導入よりも高設栽培導入の方が効果ありました。)

土耕栽培とは、ビニールハウス内に土の畝を作り栽培する方法です。この栽培方法には腰を屈めて作物の収穫をしなくてはならないという最大のデメリットがありました。そこで、立ったまま作物の収穫が可能な高設栽培を導入し体の負担と労働時間を減らすことが出来ました。最近ではいちご狩りに行くと何処の苺農家さんも導入している栽培方法です。

<環境制御型ビニールハウスの導入>

次に栽培に使うビニールハウスを環境制御型ビニールハウスに変えました。

環境制御型ビニールハウス

外見などは一般的なビニールハウスと酷似していますが、内部の設備が進歩しており、まさに農業におけるDX化にあたる重要な部分です。DX化と聞くと労働時間・労働環境が一気に解消されるようなイメージがあると思いますが、実際には先ほども述べた通り爆発的な効果はありません。体への負担軽減などは高設栽培の方が効力は上ですし、費用もこちらの方が安く済みます。しかし、作業を効率化させるという一点に焦点を絞ると、大きな効果を得ることが出来ます。それは、収量の増加と品質の向上です。

日光やCO2濃度、温湿度、養水分など環境を制御することが出来るので、作物の成長を促進することが可能です。これにより、余分な肥料や水分を与えることなく作物を栽培することが出来ます。また、通常のビニールハウスで環境を制御しようとすると、毎日決まった時間に室温の確認や気流や日光の調整などを行わなくてはならずとても手間でした。しかし、この環境制御型ビニールハウスを導入したことで随時モニタリングした情報がスマートフォンに送られてくるようになり、ビニールハウスに出向く時間を省略するこができました。(ビニールハウスのある場所は自宅から車で20分くらいなのでこれが無くなるだけでもかなりの変化です)

結果的に、2300時間あった労働時間を1800時間にまで減少させることが出来ました。根本的な改善は高設栽培への移行でしたが、環境制御型ビニールハウスにすることで、農業で最も重要な収量の安定化と効率化を実現することが出来ます。どんなに良い農産物が作れても、収量や品質がまばらだと肝心な収入が安定しません。環境を制御するという事は、収入を安定させることに繋がると私は感じています。

ハウス内の温度や空調などの設備を調整する電気パッド

【ワークライフバランスの変化】

「1800時間モデル」という日本労働組合総連合会2007年に発表した時短方針をご存じでしょうか。一日の労働時間を7.5時間にし、月間平均休みを12日間にする労働モデルの事です。農業は年間休日こそ少ないですが労働時間で見ると、1800時間。1日の労働時間は7.5時間ほどになっています。この変化により、農業にはフレックスタイム制が多く導入されるようになってきました。午後からの出勤やプライベートに合わせて時間を変更することが可能になったのです。

【農業の今後】

 実はDX化ってそんなに凄くないのではないかと感じませんでしたか。実はその通りなんです!農業市場の中にスマート農業市場というものがあります。こちらの画像をご覧ください。

参考 まいなび農業(https://agri.mynavi.jp/agriplus/vol_02/chapter01_02/

2023年現在はかなり小規模の市場であると分かります。しかし、2年後の2025年度には3倍近くの市場成長が見込める産業として注目されています。ここでDX化について私の見解を述べさせていただきます。DX化とは先行投資であると私は考えております。農業は今までデータを使って何かをするという事がほとんどありませんでした。それは、データを蓄積させることが非常に手間であり困難だったからです。毎日数回は確認する温度計、室温、地熱、日の差し加減、肥料などなど膨大なデータを蓄積できるだけの機械化が無かったのです。

また、農業は個人経営で行う農家さんが圧倒的に多く人手不足の一面もありました。しかし、データを蓄積することのできるビニールハウスや、農機具、ドローンなどの登場によりその現状は変わりつつあります。人手不足を農業用ロボットにより解消し減少した労働時間で新たな販路や、第6次産業化へ進む。そんな農業の新しい形が現実になってくると私は確信しています。

執筆:橋本ゼミ11期生 山本莉貢

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この記事を書いた人
橋本ゼミ生

産業能率大学情報マネジメント学部橋本ゼミに所属するゼミ生です。

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