なぜリフレクションビデオの作成を行うのか。チームスポーツとしてのリフレクションビデオ

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橋本研究室(橋本ゼミ)では、リフレクションビデオの作成を行っています。最近、学生から、また実践でお世話になっている方々から、「なぜ、リフレクションビデオの作成を行っているのか?」という質問を受けることがありましたので、まとめてみます。

実践を記録するという意味

最も基礎的な意味は、実践を記録に残すことです。特に、ワークショップのように何らかのアクションを伴うような実践の場合には、その場の様子は誰かが記録を残さなければ、思い出の中にしか残りません。それ故、その場で(リアルタイムに)ドキュメントを残すことが必要になるのです。専門的には、リアルタイムドキュメンテーション(RTD)と呼ばれています。ドキュメンテーションの形としては、ビデオ以外にも付箋紙や模造紙を使ったり、新聞として作成することも行われています。
当然、実践で行われたその場のすべてを残せる訳ではありません。それ故にドキュメンテーションを行う人の力量やらセンスやらが求められる分野でもあります。

リフレクションを支援するという意味

面白い実践に集中した場合、参加者はふと気づくと終わっていたという状況になります。そこで、今日何があったのかを提示することで振り返り(リフレクション)を支援します。特に、自分がどのように振る舞っていたのかは、ビデオでなければわからないことだろうと思います。

実践の様子を伝える意味

実践の参加者を集めるための広報や、何らかの報告をするためでもあります。最近ではソーシャルメディアを使った広報活動が多く使われているため、記録したビデオをソーシャルメディアでシェアするための材料として使われています。

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このように、なぜ行うのかを対外的に説明する際には、上記3点を話します。

そのほかに、「ゼミ」として行う理由があります。それは、撮影を行うこと自体に関わることです。
ビデオを作成する工程は、撮影し、その後編集という2つです。中でも、撮影する段階において必要なシーンが撮れていることが絶対的に必要です。また、リフレクションとしてその場で見てもらう際には、作成から上映までの時間が短いことが特徴です。そのようなことから、撮影を行うことで次のような点が鍛えられます。

実践の全体像を理解すること

ドキュメンテーションが始まってしまうと、言い換えれば実践が始まってしまうと、あっという間に時間が過ぎていきます。そのため、良いものを作ろうと思ったら、実践が始まる前にその実践をどの程度イメージできているかが重要になります。

ワークショップではありませんが、わかりやすいので、結婚式などをイメージしましょう。
結婚式であれば、乾杯の挨拶は必ずあります。まず、乾杯の挨拶をされる方は絶対に記録する必要があります。ただ、そのときを少し想像してほしいのですが、乾杯の挨拶をされる方と同時に、参加者全体も特徴的な動きをします。すなわち、「乾杯」のかけ声と同時にグラスをあげる訳です。つまり、乾杯のシーンであれば、最低でも「挨拶をする方」、「参加者全体」、加えて「新郎新婦」などを映す必要があるという訳です。

しかしながら、注意しなければならないのは、乾杯は当然1回しかありません。撮り損ねたからもう一度なんてこともあり得ない訳です。そのため、事前にどんなシーンがあり得るのかを想像している必要があるわけです。

瞬発力

一方、すべてがすべて事前のイメージ通りになるとも限りません。当初想定していた場面とは全く違った展開が起こる可能性も多々あります。また、それこそが面白い場面であるし、実践を描き出す上での特徴的な場面になるでしょう。そのとき、瞬発力が要求される訳です。

「今、これは絶対に記録しておくべきシーンだ」ということを感じ取る嗅覚と、その場を確実に映し出すためのポジショニングが要求されます。

ポジショニングとはこういうことです。あるグループにおいて、ワークショップ中にレゴブロックを使って作成していたものを一旦壊し、再度作り直そうという決定がなされたとします。そのときには、当然作成していたレゴを壊すシーンは撮影必須です。が、それを撮影しようとしたら、他のグループの人が前に立っていて、レゴを壊すシーンが映らなかった。これでは意味がありません。

そのためには、話し合いの会話内容から、もしかしたら、このグループはレゴを作り直すかもしれないことを察知し、そしてレゴを壊すとしたらどのアングルだったら映せるだろうかを想像し、その場所にいる必要があるという訳です。

チームワーク

また、上記の乾杯の例がわかりやすいですが、挨拶をする方と参加者全体、新郎新婦を一人で同時に撮影することは物理的に不可能です。そのため、役割分担を行う必要があります。その際、既に実践が始まってしまっていれば、落ち着いて打ち合わせなどはできません。いかに事前に打ち合わせを行っておくか、さらにはアイコンタクトなどで意思疎通を行うかが重要になります。これは、場数でありますし、お互いの癖のようなものを察知することが必要です。高いレベルでのチームワークが必要だと言えるでしょう。

端的に言えば、サッカーのようなチームスポーツ的な面白さがあります。常に動いている場面ではうまくいかないことも多々ありますが、華麗なパスワークのように、お互いの意思疎通がうまくいき、会話をせずともお互いが思い描いた場面が残せた時の喜びは、思わずガッツポーズしたくなります。

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ワークショップ等の実践に役立つ力は鍛えられるし、作成自体はあたかもスポーツをしているような興奮を覚えられることから、単純に面白いのです。長々となってしまいましたが、上記のような理由でリフレクションビデオを作成しています。

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この記事を書いた人

産業能率大学情報マネジメント学部 准教授 橋本諭(はしもと さとし)。
研究テーマは、ソーシャルビジネス、人材育成を扱っています。

橋本 諭

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