体験型ゲームの場づくりと舞台美術との比較

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 今年の瑞木祭が11月7日、8日に行われ、橋本ゼミでは、「ILIOS」という体験型カードゲームを行いました。このカードゲームは、2025年、10年後の必要なスキルとは何かと未来が関わり、私はゲームの場づくりを担当しました。
 今回の場づくりの特徴等をまとめていきたいと思います。

場づくりの重要性は何か?

 場づくりをするには、ゲームと一体感のあるデザインが必要です。デザインと聞くと、見た目と考える人が多いのではないでしょうか。しかし、大辞林によれば、デザインとは“作ろうとするものの形態について,機能や生産工程などを考えて構想すること。”と表記されています。デザインは、見た目(形態)についての「機能」が重要となります。

 では、体験型ゲームにおける機能とは何でしょうか? 場づくりとしての「機能」を考えるにあたり、近いものが舞台ではないかと思いました。
 舞台用語の中に、舞台美術という言葉があります。この言葉は、“舞台を一定空間とし、そこに存在するすべての対象物、広い意味での舞台装置全般に美的表現を与えること”です。

 舞台美術を行うのが、舞台美術家です。舞台美術家は、”演劇やショーなどの舞台で使用する装置の設計やデザインを制作し、脚本家や演出家などの意向を基に、作品のイメージを観客により伝えるための舞台装置や衣裳をデザインし制作する仕事をします。また、インテリアや出演者の持ち物など小道具や背景幕を作るのも舞台美術の仕事”となります。

 舞台美術家の堀尾幸男さんによると、舞台美術の仕事とは「演出家と観客をここちよく騙す」と言っています。 また、“舞台美術家と演出家が「夢」を見ようと言い、演出家は自分の演出を「そう見える」と思い込み、最終的にはお客さんもその舞台を観て、ここちよく思い込んで騙される。”と言っています。舞台は、思い込みの芸術であり、この演出家の思い込みをさせるのが、舞台美術家であり、「演出家と観客をここちよく騙す」、この言葉に繋がっているのだと考えます。

 今回の場づくりで言い換えると、舞台美術家は、場づくり班であり、演出家は、ゲーム班、観客は、ゲームをする人となります。
「演出家と観客をここちよく騙す」、「思い込み」、この言葉が機能を考える上で、重要なのではないかと思いました。そして、舞台と今回の場づくりを行う上で似ているものであり、今回の私が担当した場づくりに必要である(であった)と思います。

今回の場づくりの特徴

 さて、今回の場づくりは、教室で行いましたが、実際場づくりはなくてもカードゲームは場所があればどこでも行うことができ、楽しめます。
しかし、よりもっと楽しんでもらうために教室で行っていないような感覚にしたいと思いました。

 教室をオープニング(ゲームの説明のムービー)、ゲーム会場、写真ブース、ゼミ生の控室と4つに区切りスペースを作りました。

会場図

 ゲーム会場の空間だけ違う世界観にしたいと考え、表せるものとして考えたのが全体を「アルミホイル」で覆うというものです。アルミホイルは、長さ18m、幅25cmを使いました。

 「なぜ、アルミホイル?」と思ったと思います。
 3mの段ボールの柱のため、安全性を含め軽いものと考えました。そして別世界を出すためには、輝きのあるもの、現在との世界観を大きく区別するものと考え、アルミホイルとなりました。

 作業は、至ってシンプルで、まず、段ボールを組み立て約3mの柱を作り、柱を安定するために一番下にペットボトルを重みとして固定します。これを11本作ります。次に段ボールの柱に両面テープを貼り、アルミホイルを上から下まで隙間なくアルミホイルを貼っていきます。教室全体をアルミホイルで覆います。アルミホイルの使用数は、64本となりました。幅アルミホイル25cmを5枚貼り合わせました。

image

 この場づくりの説明として、オープニングブースのところからアルミホイルが目立ちます。椅子に座っていただき、ゲーム説明を聞きます。右後ろに入口があり、アルミホイルののれんをくぐるとゲーム会場となります。入口の斜め右に出口があり、アルミののれんをくぐると写真ブースとなっています。ここでは、記念に写真が撮れます。ただ写真を撮るのではなく、その写真が加工され、その写真をQRコードで読み取っていただくというものです。

 全体アルミホイルで覆われて一見同じ空間と思うとかもしれませんが、それぞれのブースで少し違う空間に感じられます。

振り返り

 上記で書いたデザインの役割を果たしていかと考えてみると、当初、場づくりは見た目だと考えていたため、内見、ゲームに必要な小道具が何もなく、デザインとしての機能がまったく果たされていなかったと思います。

 特にゲーム会場だけを世界観として出したいと意識しすぎて考えていました。そのため、他のオープニングブース、写真ブースの場づくりを考えていなかったため、殺風景のままになってしまいました。そこで、当初はゲーム会場だけをアルミホイルで覆う予定でしたが、急遽、教室全体をアルミホイルで覆うようになり、全体の場づくりを考えていなかったのが大きな反省点です。

 ゲーム会場のテーブルといすには何もデザインがなく、もっとゲームを楽しんでいただくために、テーブルをボードゲームのようにオリジナルの「ILIOS」のボードや小道具を作ることで、デザインの役割を果たすことができたのではないかと思います。

 また、場づくりを作る上で、ゲームをする人にしか場づくりに対して考えていませんでした。ゲーム班とゲームをする人を考えて場づくりを行えば、また違う形で場づくりが作り上げることができたのではないかと思います。

 今回の経験でデザインという意味の捉え方が違うことで、場づくりに足りない要素は多くありました。しかし、アルミホイルを使い別世界へと作り、アルミホイルの空間が教室ではない空間、世界観へと少しでもここちよく騙すことができたのであれば幸いです。
 
参考文献
・大辞林
コトバンク「舞台美術」
「舞台美術」の職業解説【13歳のハローワーク】
舞台美術家 なりたい職業.com
ほぼ日刊イトレイ新聞‐堀尾幸男さんの美術舞台という仕事

執筆:橋本ゼミ4期生 石井陽菜

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この記事を書いた人
橋本ゼミ生

産業能率大学情報マネジメント学部橋本ゼミに所属するゼミ生です。

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