「嘘の履歴書」 ゼミで取り組むワークショップの紹介

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橋本ゼミでは、3年生の初めに「嘘の履歴書」という課題に取り組みます。これは、就職活動に使う履歴書をその少し前に実際に書いてみるという取り組みです。ただし、嘘を必ず書くというのがルールです。通常、履歴書に嘘は書いてはいけませんが、あえて嘘を書くことがゼミとして議論になるテーマです。

嘘の履歴書とは

嘘の履歴書は、以下のような形で進めます。

  1. 1年後(3年修了時)を設定し、その時に書く履歴書を作成する(自分が第1志望に提出する履歴書をイメージする)
  2. 1年後であるからこそ、執筆時には嘘であることも書いてOK
    (ただし、過去の経歴を嘘をつくなどはNG。これから先の嘘のみ可)
  3. 嘘の部分について、どの部分が嘘か、なぜその嘘をついたのかのレポート作成
  4. 履歴書およびレポートをゼミ生で共有し、お互いにコメントをしあう
     (元々ゼミ内で公開することを前提に出題していますが、非公開でもOK)

嘘の履歴書で難しいのは、どういった嘘をつくか?です。
就職活動における履歴書は、企業からの評価を得るための活動ですから、企業からの評価に関係ない部分で嘘をついても意味がないのです。
また、嘘をつかずとも評価されるのであれば、当然嘘をつく必要もありません。

嘘をつくのは、

  • 企業が採用を考える上で重要そうな内容
  • 現状では未達、未熟であるため「盛る」

といった内容が多くなります。

狙いと学生の反応

この課題の意図はいくつかあります。

まずは、履歴書を実際に(形式的ではなく本気で)書いてみることによる効果です。

たとえば、「ガクチカが弱いと思った」といった反応が出てきます。
ただし、昨今の学生において(少なくとも本学の学生において)は、就職活動に関する準備については、意識の中にあると思います。キャリア(特に就職活動)に対しては、むしろ過度な位に情報が溢れているためだろうなと思います。

面白いなと思うのは、嘘が狙いと違う方向に進んでしまうことへの内省です。
つまり、本人は大事だと思って嘘をついたが、周りからのフィードバックを経て、「その嘘はつく必要はあったのだろうか?」となることです。変に企業に合わせようとしたことが逆に合わなくなるといった反応があります。

※なお、ゼミ運営上のありがたいこととして、現在人事パーソンとして活躍しているOBOG達からのフィードバックが得られるので、大変助かっています。

同様に、本人が弱みだと思っていたことが周囲からは「特別弱みだと思われていなかった」といったこともわかります。

そして、この1年どのような活動をしていくのかがポジティブに変化する効果があるように思います。

一見、バックキャスティング的進め方ですが、事前に想定していた目標よりも高い目標だったり、遠い目標、届くかどうかがわからないような目標を掲げる所が面白いなと思います。また、この活動は面白いから「就職活動のこととか考えずに」、すなわち「ガクチカにしようなんて不純な気持ちを持たずに」やっていきたいといったことも出てきます。このワークショップとしての狙いはここにあります。

最後に、とても興味深いのは「第1志望」が変わることです。むしろ、真剣に考え始めるといった所でしょうか。大学受験には、偏差値などの(全く万能ではありませんが)万能そうに見える指標があります。こちらももちろん優秀な人であるほどその指標が万能でないことはわかるのですが、会社に関してはそんな指標さえもありません。

その中で企業を探すということの困難さや、本質的重要性に気づくという所が大きいのかなと思います。

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この記事を書いた人

産業能率大学情報マネジメント学部 准教授 橋本諭(はしもと さとし)。
研究テーマは、ソーシャルビジネス、人材育成を扱っています。

橋本 諭

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