SDGsは企業には関係ない? むしろビジネスチャンスと見られています

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 今年のゼミでは、SDGsをテーマとしています。SDGsをきっかけにしてそれぞれの問題意識を拡げること、深める事をしていきたいと思っています。

 SDGsは、2015年に国連で定められた持続的開発目標です。2030年までに持続可能性を持った社会を作ることが目標として掲げられています。

 SDGsは、勘違いされている点もあります。具体的には、「SDGsってのは、貧困対策で、アフリカで子供が飢餓で苦しんでいるのを救うという話でしょ?」といったものです。もちろん、それは間違っている訳ではないと思いますが、「それだけではない」という所です。

 アフリカにおける貧困という捉え方だと、日本とは遠い国の話で、「自分たちとあまり関係がない」という認識になってしまいがちです(その認識も正しくはないと思いますが)。しかし、SDGsは「それだけではない」のです。

 SDGsには、17の目標があります。その一つ目は確かに「貧困」ですが、絶対的貧困だけではなく、相対的貧困についても目標の一つなのです。つまり、国内問題でもあります。

 また、SDGsは「意識が高い個人」が取り組んでいるものでしょ?といった誤解もあります。様々な捉え方はあるかと思いますが、SDGsはもう少し経済原則的なものをベースにしているとも考えられます。

 たとえば、SDGsに関する企業の行動指針を定めたものに「SDG Compass」があります。こちらには、以下のような記述があります。

将来のビジネスチャンスの見極め
SDGsは、地球規模の公的ないしは民間の投資の流れを、SDGs が代表する課題の方向に転換することを狙いとしている。そうすることにより、革新的なソリューションや抜本的な変革を進めていくことのできる企業のために、成長する市場を明確にしている。

 もちろん、CSRとして取り組むべきものでもありますが、「こちら側、儲かりますよ」というメッセージでもあるわけです。

 同文書の中では企業は以下のように位置付けられています。

 企業は、SDGs を達成する上で、重要なパートナーである。
企業は、それぞれの中核的な事業を通じて、これに貢献することができる。
私たちは、すべての企業に対し、その業務が与える影響を評価し、意欲的な目標を設定し、その結果を透明な形で周知するよう要請する。
  潘基文 国際連合事務総長

 SDG Compassは、5つのステップでできています。
 ステップ1 SDGsを理解する
 ステップ2 優先課題を決定する
 ステップ3 目標を設定する
 ステップ4 経営へ統合する
 ステップ5 報告とコミュニケーションを行う

 経営の一部として取り組んでいくことが期待されています。
 
  バリューチェーンへのマッピングの例 P12

 企業がSDGsに取り組む理論的な根拠として、以下のことが示されています。

 企業の持続可能性のための理論的根拠はすでに十分に確立されている。バリューチェーンに持続可能性への配慮を組み込むことで、企業は、たとえば、売上の向上、新規市場の開拓、ブランド力の強化、操業効率の向上、製品イノベーションを促進、従業員の離職率引下げ、等により、自社の価値を保護・創造することができる。
 — 特に若い世代は、責任ある包摂的な事業行動を重んじる傾向にある。企業が持続可能性を伴う行動を実践することは、「企業間の人材争奪戦」を制する主要な要因として注目を集めている。企業が SDGs に寄与する行動を取れば、従業員の労働意欲、協働、生産性を職場で向上させることができる。

 売上の向上や新規市場の開拓、ブランド力の強化だけではなく、人材争奪戦にも勝つことができますよとしています。これらは、あくまで理論上の話で、具体的にどのように実現するのかについてははっきりとしていません。

 しかし、SDGsが個人のものとか、自分たちには関係ない話ということではなく、企業にとっても着目すべきものであることは確かだと思います。

 世界の問題は、SDGsだけではありません。SDGsをきっかけとして、問題意識を拡げること、深めることにつなげていきたいと思っています。

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この記事を書いた人

産業能率大学情報マネジメント学部 准教授 橋本諭(はしもと さとし)。
研究テーマは、ソーシャルビジネス、人材育成を扱っています。

橋本 諭

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