消費者的好きと生産者的好きの違い

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最近、同じような話を複数の場所でする機会がありました。それは、物事を好きといった時に、消費者としての「好き」と生産者としての「好き」は違いますね、といった話です。

好きだというから任せてみたら、萎えてしまった人の話

あるところで、「スポーツイベントが好きだ」と言う人にスポーツのイベントを作ってもらったら、「やりたかった事と違う」と言い出したというのです。イベントの主催者からすれば、やりたいと言う人にチャンスを与えたが、途中で「萎えてしまった」と捉えました。主催者からすれば「好きではなかったのだろう」という印象を持ったということです。

では、この人はスポーツイベントが好きではなかったのでしょうか? 多分、「参加するのが好き」だというのは嘘ではないと思います。しかし、「作る側に回る」ほどではなかったのでしょう。

これが、スポーツそのものであった場合には、簡単にわかる事です。サッカーを見る事と、サッカーをする事の違いははっきりしています。自分が90分間ダッシュを繰り返しながら10キロ以上走れるとはそうそう思わないでしょう。

しかし、イベントを作る事だったら「できる」と思ったのではないでしょうか。ですから、必ずしも「好きではなかった」という訳ではなく、「好き」の種類が違うと捉えた方が良いのだと思います。

この「スポーツイベント」の部分は、スポーツに限った事ではなく、音楽のライブとか、ワークショップとかでも同じかもしれません。消費者的な好きと生産者的な好きには違いがあるのだと思います。

消費者と生産者の「好き」にたどり着くコストの違い

私は同じ「好き」であっても消費者と生産者との違いが出る理由は、消費者としての「好き」を得られるために必要な努力(コスト)と、生産者として「好き」を得られるための努力(コスト)との差にあるのではないかと考えています。

「ライブが好きなので、ライブに行くためにバイトを頑張りました」

以前、ある高校生からこのような発言を聞く機会がありました。
この高校生にとっては、ライブという好きなモノを得るためにバイトを頑張ったというのです。多分、時給900円程度だとして、10時間くらいでしょうか。この高校生にとっては、「好き」を得るためには10時間のバイト(努力)が必要だということです。逆に言えば、10時間頑張れば、「好き」を得られる。そして、頑張って得たという思いは残る訳です。

一方で「ライブを企画する」のであれば、10時間程度の努力では全く無理です。どれだけ小さいイベントだったとしても、もっと大量の時間が掛かるでしょう。努力という単位が全く異なってくるのです。

大人の場合には、お金に余裕が出るでしょうから、消費者としての「好き」を得る事のハードルはさらに下がるのだと思います。飲み会二回くらい我慢すれば、プロが努力を積み重ねた一流のモノに参加する事ができます。楽ちんです。

特に最近は、参加者が体験する形のイベントも増えてきました。それ故に、消費者として「好き」であっても、何らかの体験ができますから、あたかも生産者になった気持ちを疑似体験できるのかも知れません。しかし、実はそこには大きな差があるのだと思います。

消費者のままでいるか、生産者になるか

ここから先は、どういった立場を取るかによって話が変わるでしょう。

たとえば、学校のように養成する立場だとすると、消費者的「好き」だけしか持っていない人には、生産者としての「好き」に変化してもらう必要がありそうです。それが変わらないという人には「好き」とは言っていても提供側になることや、その道で食べて行くことは諦めるように伝えることの方が親切かもしれません。

学生の場合には、自分の「好き」が消費者としての「好き」は前提としても、生産者として「好き」かどうか(好きになれそうか)は考えた方が良いかと思います。「好きなことを仕事にする」というのは、消費者のままでは難しく、生産者になれるかが鍵を握っているでしょう。まずは、一度小さくても良いのでやってみることをオススメします。

個人的には、生産者となると非常に多くのものを得る事ができると思っています。その魅力を「知ってしまったら」、消費者としてだけでは満足できない訳です。生産者として得られる自ら作る楽しさは、作られた楽しさである消費者としての楽しさとは比べ物がないと思います。

しかし、消費者としての満足で十分であるのだとすれば、無理して生産者にならない方が良いのだと思っています。その差は、非常に大きいですし、生産者となっている人達も全てが全て生産者だというわけではなく、「生産者の部分もある人達」だと思うからです。

なお、消費者として「好き」を否定するつもりは全くありませんし、むしろ消費者として得られるものは素晴らしいと思っています。ただ、消費者と生産者は違うということは理解している方が良いと思っています。

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2016年11月20日 一部加筆修正。

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この記事を書いた人
橋本 諭

産業能率大学情報マネジメント学部 准教授 橋本諭(はしもと さとし)。
研究テーマは、ソーシャルビジネス、人材育成を扱っています。

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