EnCamp振り返り デザイナーからのお節介な贈り物

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 3月1日、2日と東京大学中原研究室の春合宿(EnCamp)に参加させてもらってきました。以前の記事はこちらです。

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 Encampには、東京大学中原先生重田先生同志社女子大学上田先生法政大学長岡先生東京都市大学岡部先生、本学荒木先生といった「学び」に関連した研究者をはじめ、企業人、大学院生、大学生までが多様に集まりました。3月1日12:00スタート2日12:00解散の24時間のプログラムですが、twentyfourに負けずとも劣らない濃密な時間でありました。

 大変得るものや、考えるものが多く、へろへろになっているのですが(帰りの車は、本当に危なかった…)、折角このような場を提供していただきましたので、未熟ながら何らかの貢献をしたいと思い、「お節介な贈り物」をしたいと思います(得るもの大きかったので、後1、2回記事にしたいと思います)。

 贈り物は、私が企画および実施に参加した「2017年のビジョン」作りセッションに関する2つの問いかけです。

2つの問いかけ

1.研修とは? ワークショップとは? 何でしょうか?
あえて「研修」という言葉を随所に使いました。また、セッションをデザインするに当たって、(少なくとも私は)インストラクショナルデザインという伝統的な手法(当日の言葉を使えばLearning1.0の世界観)を意識して作成しました。そして、外観的な部分については、「研修っぽく」仕立てています。
 しかし、「中身」は研修的にはしていません。「ワークショップっぽく」なるように意識しています。そのため、何らかの「要素」のようなものは入っているかと思いますが、あくまで「研修」でしょう。体験してみていかがだったでしょうか? これは「研修」ですか? ワークショップですか? それとも何でしょうか?

2.みなさんは、何から学んだのですか?
このセッションでは、いわゆる「インストラクション」はデザインしていませんし、入れてもいません。何か「教えても」いませんし、「教わってもない」と思います。しかし、参加者からは、「勉強になった」という反応をいくつかいただきました。
 その場で皆さんは何らかの「学び」がありましたでしょうか? もし、あったとするのであれば、インストラクションがない中で、それは「何によって」学んだのでしょうか? そして、それは未来の「Learning Design」の一部でしょうか?

お節介な話

 これまで、様々な研修をデザインしてきました。うまくいったと思うものもあれば、大失敗したものもあります。大した経験ではありませんが、それでも「何となくの型」のようなモノはつかめてきているのかなと思う「部分」もあります。しかし、こうしたデザインというのは、経験的な部分が多く、ある種「職人的」な世界が強いのかなと思います。

 そこで、今回はどのようにデザインしていったのかを、極めて私的な目線で述べたいと思います(本セッションは、4人での共同作業でおこないましたので、当事者間でも感じていることは異なっていると思われます)。何らかの機会になればと思います。

デザインの過程

 最初に、合宿における3つのセッションのひとつとして、「2017年(5年後)のビジョン」を考える2時間のセッションを作る、という事が決まりました。この時点では題目が決まっただけですので、具体的にどのような事をやっていくのかコンセプトワークからはじめています。結果的に、ミーティングは、対面でのミーティングを2時間×2回、Skypeでのミーティングを3時間×2回ほど行いました。

 その際に検討した内容としては、「今回のセッションに関する主催者のニーズ」、「参加者の属性」、「時間的制約」、「場所の制約」、「当日の意欲状態」、「使用できる”道具”」などなどです。特に一番気にしたのが、「参加者の属性」です。

 ビジョン作りをするというという事を集団でやる場合には、当然のことのように「かなりの前提条件」の同意が必要となります。たとえば、組織のビジョンを作るという際に気にしなければならないのは、ざっくり分ければ「外部環境」と「内部環境」についての現在、および未来の姿です。研修などの場で行うのであれば、このうち「内部環境」については、「深い部分」での違いがあることが認識できるだけの、「浅い部分の共通認識」が必要になると思います。たとえば、「何人くらいの組織」で、「どんなことをやっているのか」については、当然のごとく共有されている事を前提とするという事です。

 今回のように、あまりにも多様な人達が集まる場において、「かなりの前提条件の共有」が必要とされる「ビジョン作り」というのは、かなりハードルが高いという結論に達しました。その結果、「ビジョンを作る」という事はせずに、「ビジョンについて話をする」という2時間になるように設定を行いました。

 これ以外の要素も多々ありますが、上記のような議論を重ね、セッションを設計していきました。

セッションの内容

 EnCampに参加していない方もいらっしゃいますので、セッションを簡単に説明します。
 今回は、2日目の朝に2時間のセッションを行いました。簡単に説明をすると、以下のようなものとなりました。

1.2017年における「自分の」ビジョンを考えるセッション
2.タカラトミー社の人生ゲームを題材に、人生に様々な条件(イベントカード)が課されるという設定
3.人生に課された条件に、当事者としてどうするか、また、他者としてはどう感じるかを話し合い
4.様々な条件等を勘案し、2017年のビジョンを考えていく
5.ビジョンを考えるに当たり、「他者」に「貢献する」という設定を加えることで、飛躍させるきっかけに

今回の工夫した点

 今回、工夫したのは、以下のようなものです。

1.あえて多様性(年齢的、分野的、性別)を活用したプログラムとする
2.ゲームという設定を行うことで、ワークへの真正性を高めるようにする
3.設定条件は、できる限り人によって受け取り方が違うようにする
4.相手の事を考え無ければならないように、仕立てる
5.場の時間のコントロールを「寸劇」を混ぜる事で、ゲームの設定から離れない

 1.あえて多様性(年齢的、分野的、性別)を活用したプログラムとするという点については、多様な人達がお互いに話し合える事を目指しています。違いを意識できるようにしたいという想いです。

 中でも、様々なグルーピングを検討した結果、「話し合う」という活動を行おうとした場合、最も違いがでるだろうと想定されたのが、「年齢」に関するものでした。そこで、グループ毎はほぼ同一に上下差がある年齢構成になるように設計しています。

 「年齢」というのは、こういった場ではあまり「表に」出さないものではないかと思います。特に、「創発的」とか「参加型」とか言った場合には、「年齢を意識」する事自体が「創発的ではない」ような印象を与えているように感じるからでしょうか。いずれにしても、あまり年齢を意識させることはないのではないかと思います。

 そこで、敢えて「研修」という言葉を使う事によって、「年齢」を表にだしても違和感がないことを目指しています。昔から「ファミリートレーニング」や「階層別研修」等がありますから、研修においては「年齢」とか「階層」を表に出すこともおかしくないだろうというような判断です。
 

 2.ゲームという設定を行うことで、ワークへの真正性を高めるようにする事については、敢えて分けた年齢などの違いを意識したうえでの「発言」となるように仕立てています。

 大きく2つぐらい狙いがあります。一つ目は、しゃべらない人(逆に、延々と演説する人)を作らないためです。年齢毎に役割を設けることで、それぞれの発言の必要性を高められるようにしました。「私はこう思う」ということが、聞く側にとっても意味があるようにするという意図があります。
 これは、もう一つの狙いにも関わってきます。

 もう一つの狙いは、「アドバイス」する、「質問する」という事のハードルを下げる事です。
 「年上から年下にアドバイスをする」、「忠告する」というのは、今回の参加者は「前時代的」と感じるだろうと思ったからです。もう、そういう時代じゃないと。

 しかし、(私は)その言説自体が「前時代的」であり、実は違った世代と「話をしたい」し、「話を聞きたい」のではないかなと思っています。しかし、「アドバイスをする」、「素直に聞く」という事が中々しにくくなっているのではないかと。むしろ、敢えて設定を行う事で、「設定だから仕方なく」という事が出来ないかなと考えました。

 3.設定条件は、できる限り人によって受け取り方が違うようにする事については、「ピンチもチャンスも受け取り方次第だ」という話でもありますし、経験を持った大人が「ちょっと違った話」が出来るように「一見、ピンチにしか見えない」という話を織り込んでいます。

 普通に研修を行うとしたら、設定はもう少し楽にしますが、今回は「語れる人」が多数だろうということから、「語りにくい」位がちょうどよいのではないかと設定しています。実際、語れなければ「介入」することを考えていましたが、ほとんどのグループでそれは必要ありませんでした。それだけ、語れる人達だったのだと安心しています。

 一方、こちら側の話ですが、「介入しよう」という判断が、運営側で時間的に一致したのは、楽しい経験でした。きっと、話あった訳ではありませんが、「全体のバランス感」のようなものが一致していたのだと思います。かなり感動ものです。

 4.相手の事を考え無ければならないように、仕立てるという事については、前項の「5.ビジョンを考えるに当たり、「他者」に「貢献する」という設定を加えることで、飛躍させるきっかけに」に関連する項目です。

 今回のデザインにおいて、こだわったのは、「他者への貢献」という内容です。自分のビジョンを考えた際に、そのビジョンによって「誰に」「何を」するのかは、とても抽象的になると思いました。その抽象性を、その場にたまたま一緒になった「他者の困ったこと」を解決しようという「具体的な」課題に転嫁することで、ビジョンに具体性と、一人で考えているのでは考えが及ばない所に「ジャンプする」契機に出来ればとの想いです。

 そして、もしかしたら、「自分のビジョンを達成しようと努力すること」は、「誰かの助けになるのかもしれない」と感じられたら、(少なくとも自分は)「うれしいのではないか」という想いがあります。
 言うなれば、ワンピースのルフィの「海賊王になる」という夢に、ゾロやナミは自分の夢の達成で貢献しようとする、そんな関係性があれば「ステキ」かなと思いました。

 5.場の時間のコントロールを「寸劇」を混ぜる事で、ゲームの設定から離れないということについては、時間の制御についての話です。「話し合い」については、うまくいけばいくほど「時間は足りない」と感じるかと思います。「もっと話したいな」と感じるのだと思うのです。ですから、そのときに「では、時間です」と切ってしまうことは、その空間への集中を阻害する要因になってしまう訳です。ファシリテーターは気配を消していたいのです。

 そんな中、今回は大先輩がある意味での「汚れ役」を担ってくださった事により、時間の進行は、「突然始まる寸劇を見る」という事で進められました。たぶん、一度も「そろそろ時間です」という介入をしないですみました。

 今回のセッションは、1分単位で時間を計画していました。そして、場を見ながら「話し合い」の時間についてはコントロールしていきました。結果的に、狙い通りの時間で終わった訳ですが、その要因として大きいのは言うまでもないかと思います。

最後に

 上記のような狙いを意識しているのですが、実際の所どうなったのかは、わかりません。皆さん、「面白かった」といってくれていますが、「本心はどうだったか」はわからないのです。きっと、アンケートを採っても同じでしょう。デザイナーとしては、その場の雰囲気を極めて冷静に振り返ることで「察する」ようにしたいと思います。その意味で、反省点は多々あるわけです。
 それでも、かなりの部分は想定通り、予定調和的であったなと思います。「研修」っぽさは出せたかと思います。

 そして、最初の問に戻ります。

1.研修とは? ワークショップとは? 何でしょうか?
2.みなさんは、何から学んだのですか?

 EnCampに参加された方も、されていない方も、何らかの議論のきっかけになれば幸いです。

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この記事を書いた人
橋本 諭

産業能率大学情報マネジメント学部 准教授 橋本諭(はしもと さとし)。
研究テーマは、ソーシャルビジネス、人材育成を扱っています。

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