「待つ」という仕事

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 4~5年ほど前からでしょうか、「Lifehack」という言葉が流行してきました。人生を効率的に過ごしましょう、という意味や、ワークライフバランスなどと親和性の高い言葉かも知れません。GTDなどの具体的な手法もあります。総じて、ITを使って人生をより良いものにしていきましょうという事だと理解しています。

 様々効率的に行っていった場合、最終的に制約になるのは時間です。1日は、24時間です。いかに効率化を図ったとしても、この制約を超える事は、(今のところ)難しそうです。

効率化するべき対象

 会議などを考えてみると、参加者×人数分の時間を費やす訳です。この会議が意味のないものであるならば、それはできる限り効率的に実施すべきでしょう。

 1人が10分遅れてきたのであれば、10分×人数分の時間を奪った事になる

 これは、新入社員研修などで必ず言われる言葉です。一般論として、常識的に受け取っていましたが、それは、忙しくなればなるほど身につまされる言葉です。しかし、忙しくない人(もっと、ぶっちゃけて言えば、他人から求められることが少ない暇な人)ほど、その価値に気付いていないため、溝は深くなるものです。自分自身、反省すべき点が多々あります。

 逆に言えば、時間を費やすという事は、それだけで贅沢な事と言えます。誰かのことを「待つ」あるいは「待ってもらう」という事は、それだけで価値があることだと言えます。

「待つ」という仕事

 一方、「待つ」という事が絶対的に必要な仕事の人達もいます。たとえば、農家であれば、自然を相手にしているので、お天気や成長を「待つ」という事は必須です。また、「役者は待つのが仕事」という言葉があるように、芸能人などもロケ現場などにおいて自分の出番を「待つ」という事が必要だと言います。

 同じように、教師という仕事も待つのが仕事かも知れません。いや、人を育てるというのは「待つ」事が重要と言えるかと思います。

育つまで待つということ

 「認知的徒弟制」という徒弟制で人を育てるということをモデル化した考え方があります。ここでは、「モデリング」「コーチング」「スキャホールディング」「フェーディング」という4つのフェーズに分かれています。
 
 それぞれ、ざっくりと説明すると、モデリングとは、見せて学ぶ(見て学ぶ)ということで、親方が弟子に仕事を見せるという事です。コーチングとは、仕事のしかたを伝えるという事です。スキャホールディングとは、聞き慣れない言葉ですが、「足場を掛ける」という意味があります。具体的には、弟子が現在できること+αの仕事をさせる事です。この+αの部分は、「誰かの手を借りればできる」レベルに設定をします。最後にフェーディングとは、親方からの支援をなくしていき、ひとりでできるようにしていくことです。

 このプロセスにおいて、「スキャホールディング」と「フェーディング」をしている最中というのは、まさしく「待ち」の時間となります。当然、自分がやった方が早い仕事を足場になるぐらいまで調整し任せることになります。手を出してしまいたい気持ちをぐっと抑えて、「待つ」という事が必要になります。
 
 「待つ」という事は、貴重な時間を使うがゆえに、忙しくなればなるほど難しくなるものです。また、「待ってもらっている」側は、「待つ」ことがどれだけリソースを割いてもらっているか理解していないことも想定されます。

 しかし、育てるというプロセスにおいては必要不可欠な事だと認識して、意識的に「待つ」という事が必要ではないでしょうか。

中小企業への示唆

 あなたの会社では、「待つ」事が必要であると認識されているでしょうか?

PS:本エントリーは、面談を約束していた学生がやってこなかった「待ち」の時間に執筆しました。

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この記事を書いた人
橋本 諭

産業能率大学情報マネジメント学部 准教授 橋本諭(はしもと さとし)。
研究テーマは、ソーシャルビジネス、人材育成を扱っています。

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