「就活の神さま」常見陽平 @yoheitsunemi を読んだ

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 本書は、小説というストーリーを使いながら、就職活動(就活)に必要な知識やマインドを紹介している。さらっと読める文体の中に、就活にありがちなエピソードが散りばめられており、振り返ってみて「そういったこともあったなあ」と懐かしく思った。

 今35歳以下ぐらいの人達は、就職氷河期と言われる中を数々批判がある新卒一括採用の中をくぐり抜けてきている。新卒という武器を失うと、とたんに世間は冷たくなる事から、ある種の通過儀礼的に乗り越えてきている。だから、「就活」と言えば、誰しも一家言あるものだ。

 曰く、「自己分析が重要だ」「企業研究に力を入れるべきだ」「どれだけの経験をしてきたかが重要だ」などなど。もちろん、自分自身もそういったものを「ちんけなものであるが」持っている。一方、就活は通過儀礼であるためか、多数経験している人は少ない。転職活動はまた違うものだと思うため、就活をリアルに体験するのは、ほとんど1回で、多くて2回だろう。自分も学部時代と院生時代の2回体験した「だけ」である。

 その一方、毎年毎年「就活」の状況は変わる。例えば、今年はリクナビ等の就活情報サイトは12月1日がオープンとなっている。本書でもそういった流れをくんだ書き方になっているので、今年就活する人にはぴったりの内容である。(来年は状況は変わるだろうから、来年には「就活の神さま2013」が出てフォローしてくれるものと思う)
 それ故に、過去経験したことが、今使えるかどうかは確かではないことに気づかなければならないと思う。いや、「仕事とは、働くとは何か」といった本質的な話以外、ほとんど使えないと思った方が良いと思う。そういった意味では、過去経験した人にとっては、今を知れるものであるし、自分もそういったつもりで読んだ。

ブラック企業

 最近の事例だなと思った事として、ブラック企業がある。ブラック企業とは、法律を守らなかったり、仕事がキツくて離職者が多い、にも関わらず給料が安いという企業の事だ(定義は色々だか)。一つの事例として紹介される事に、googleの検索結果に出てくる「良く検索される項目」で、「企業名+ブラック」と出ていると、「ブラック企業なのか」と思ってしまう主人公が描き出されている。

 定義がいろいろなように、法律を守らないは論外であるが、仕事がキツい=悪い会社 であるかはわからない。その意味で、ブラックだと言われる企業が悪い訳ではない。しかしながら、こういった言説が語られる中で、「ブラック企業にだけは行きたくない」という学生が多いことも確かなのだ。

 そういった「今」を示し、そこにある種の「回答」を示す事は意味があることだと感じた。

今打てる対策

 大学ではキャリア支援が求められている。そもそも、大学でキャリア支援を行うべきなのか?という議論や、どういうキャリア支援が必要なのかという議論もあり、これと行った解答は出ていない(と思う)。その一方で、そういった議論とは関係なく、目の前の通過儀礼を前にスタート地点に、本人が気づいているかいないかに関わらず立っている人達がいるという事だ。

 そのため、こういったライトな文章で読める「現実解」を示す事は重要だと思う。是非、就活を控えた学生や親御さんに手にとってもらうと良いのではないかと思う。とても良い本である。
 一方で、本書には、「就活の世界ってウソばっかりだから(P159)」という記述がある。学生さんは、この本も当然就活の世界のものだから、ウソも書いてあるだろうというぐらいのスタンスで。

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この記事を書いた人

産業能率大学情報マネジメント学部 准教授 橋本諭(はしもと さとし)。
研究テーマは、ソーシャルビジネス、人材育成を扱っています。

橋本 諭

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