「参加型」リフレクションムービー三部作 @MALL(経営学習研究所)

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2012年6月4日 東大中原先生にお声がけ頂き、先生が理事をされている一般社団法人経営学習研究所のキックオフイベントにて、リアルタイムドキュメンテーションによるリフレクションムービーの作成を行ってきました。貴重な場を提供いただきまして、ありがとうございます。

ワークショップにおいて、その場の動きを記録するリアルタイムドキュメンテーションとリフレクションムービーについては、これまでも実施してきました。(たとえば、これなど)しかしながら、研究として行う上での一番のネックは、作成したムービーを中々外に出せない事です。

たとえば、授業のようすなどを撮影していますが、学生の顔写真やアクティビティがバンバン映るものを簡単に公開することはできません。それ故に、どんなものを作ったのかとか、参加者からのフィードバックを得られずにいました。

もっとクリティカルなことは、ワークショップの最後にみんなでムービーを見ますが、たかだか数分のビデオを「1回」見ただけで、一体どれだけのリフレクションが出来るのか? という素朴な疑問でありました。そのような中、今回の機会を頂ける事になった次第です。

MALLは、経営・組織・学習に関する研究・実践の普及・振興・研究を行うために実務家と研究者がつくった新たな組織とのことです。詳しくは中原先生のブログを参照ください。
http://www.nakahara-lab.net/blog/2012/06/mall_1.html

今回ムービーを作成するに当たっては、ただ単純に作った訳ではありません。新たに生まれた組織MALLは、若い人達に「失敗できるような場を与える」ことをひとつの目的にしています。その第1号ですから、「成功か失敗かギリギリの所」を攻めざるをえません。色々と話しあいを行い出した答えは、「参加型」のリフレクションムービー(Participate Reflection Movie)の作成です。

これまでのリフレクションムービーは、主催者側で動画や写真の撮影を行い、それを元にムービーを作成していました。ですから、基本的には「他人」が作ったムービーです。現在、学習の世界では「参加型デザイン」が普及してきています。たとえばアンカンファレンスなど。であるならば、「自分のリフレクションは自分で作っていいじゃないか」というのが素朴なアイデアです。

参加者には、その場で気付きを得た「ヒト」「モノ」「コト」を写真に撮ってメールで送信してもらい、学びに繋がった「言葉」をTwitterでつぶやいてもらいました(会場内の撮影を内田洋行様より特別に許可を頂きました)。それらをリアルタイムで編集し、リフレクションムービーに反映させるという事を行いました。

「参加型」とは言いながら、参加者が全く参加してくれなかったら、「全て水の泡」です。一方、熱心に参加していただくと作業が追いつきません。そんなフタを空けてみるまで分からないという恐怖と戦いながら、できる限りの準備をしていきました。今回、会場となったユビキタス協創広場 CANVASは無線LANを使用できたので、クラウドで共有を行いながら、1台のパソコンでメールでの写真の受領、1台のPCでtwitterの監視、1台のPCで編集をリアルタイムで行いました。
また、学生ボランティア(図らずも本学の学生がたくさんボランティアに来てくれていて、うれしかったです)に協力を頂き、通常通り撮影を行いました(参加してもらえなかった時のための保険かつ、通常通りの作成のため)。

編集の作業は熾烈を極めました。最後の最後になってかなりの数の写真やtwitterが寄せられたからです。
それでも何とか、3分押しで作成されたのが以下のビデオです。


経営学習研究所(MALL)キックオフイベント リフレクションムービー

参加者の方々、および本イベントに参加できなかった方(約4倍の倍率と伺っています)は、こちらをご覧下さい。全体が確認できるかと思います。こちらは、会場にて最後に流したものです。

通常はこれ1本でしょう。しかし、もう少し新しいことにチャレンジしました。今回は、リフレクションムービー3部作となっています。この3部作は繋がっています。全て見ると、もう一度見たくなるかと思います。

2つめは、「完全参加型」のリフレクションムービーです。こちらは、完全に参加者の写真とつぶやき(一部主催者側のものもある)で構成されています。他の人がどのような事を感じたのか、どのような写真に気付きを得たのかをご確認ください。


経営学習研究所(MALL)キックオフ 「参加型」リフレクションムービー

こちらの映像は、「ぱっと」見る事を念頭に置いています。よく読みたいつぶやきがあれば、動画を止めてみて下さい。立ち止まる事を期待しています。

もし、完全に参加型のムービーをつくるとしたら、こういった形になっています。

最後に、メイキングムービーです。
メイキングムービーと言っても、MALLという場自体がかなり細かい所まで「場」のしつらえに凝っていました。学生ボランティアの集合が開場の4時間前というのも普通はあり得ないのではないでしょうか。そういったMALLという場を象徴するメイキングをムービーにしています。

こちらは、参加者は全く見ていないものになっています。どのような形であの場ができていたのかを思い出して(振り返って)もらいながら、見ていただきたいと思います。


MALLの「場」の作り方

3つとも見ていただきましたら、もう一度本編をご覧下さい。又違った形に見えてくるのではないでしょうか。

Twitterのまとめは以下にあります。
http://togetter.com/li/315315

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いくつかの気付き

今回気付きを得たことをまとめておきます。

「参加型」のリフレクションムービーについての成否は、50:50という所でしょう。形としては、つぶやきや写真を入れられましたが、これを持って「参加型」と言えるのか? ここは微妙な所でしょう。かなりの部分は「学生ボランティア」が撮影しています。(主催者側の社会人は全く撮影に参加しておりません。全て学部学生です。)参加が活発化しなかった一番の理由として考えるのは、「何を撮れば良いのか」を共有できていただろうか? という点です。この点は、自分の想定が甘かったことだと思います。しかし、その一方で、確かに参加しているのです。また、もっと参加したかったという意見も多々ありました。こちらは、今後に繋がる点と言えるかと思います。

また、大きな驚きとして学生ボランティアのカメラワークが劇的に成長していった事です。私から指示した事は基本的に1点です。「プログラム内容を暗記し、その中でどのような学びの場が生まれるかを想像し、その場所に先回りして、あなたが考える”学び”の瞬間を捕まえてくれ」です。極めて抽象的な指示ですが、会が進むにつれて彼らの撮ってくる写真のクオリティがどんどんと上がっていきました。編集用PCに写真や動画を集めながらびっくりしてしまいました。

それだけ、彼らは短い時間で成長しているという意味もあるでしょうし、撮影をするという行動がメタ的に見る力を要求し、養成しているように感じました。こちらも今後の研究、あるいは教育に活かしていきたいと思います。

最後に、この度はこういった貴重な研究の場を与えて頂いた事、その補助に多数の学生ボランティアの方に手伝っていただきまして誠にありがとうございました。

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この記事を書いた人

産業能率大学情報マネジメント学部 准教授 橋本諭(はしもと さとし)。
研究テーマは、ソーシャルビジネス、人材育成を扱っています。

橋本 諭

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