歯応えのある本をワークショップ的に読む手法

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先日、関西大学の松下ゼミとzoomを繋いだ合同ゼミを行いました。物理的距離は離れた中でも、濃密な議論ができるのはコロナ禍を経て、私たちが得た少ない良い点だなと思います。

当日は、少し趣向を凝らした取り組みを行いましたので、共有しておきたいと思います。
行ったのは、1冊の本を用いて議論を行うというものです

以下、ゼミを単位に記述しますが、ゼミ以外でも当然実施可能だと思います。

事前準備

1.1冊の本をメンバーで分担する(章ごとの担当を分ける)
 ・その際、ゼミとして1冊担当するようにする(つまり、同じ章を別のゼミの誰かが担当している)

2.A4サイズ2枚の制限の中で、まとめのレジュメを作成する
 ・zoom利用を前提としていたので、共有しやすいようにパワーポイント16:9で作成しました

3.当日までにレジュメは共有する(2ゼミ分集まります)

当日の流れ

・オープニング 20分
 ・趣旨説明
 ・アイスブレイク(自己紹介)

・ブレイクアウト① 担当者ごとに意見交換(30分)
 ・同じ章を担当した人同士で意見交換
 ・当日は2〜3章でグループを作成しました。

・ブレイクアウト② 片方のゼミが別のグループに移動し、説明を受ける(25分)
 ・ブレイクアウトルームの中で片方のゼミ生のみ別の部屋に移動します
 ・担当ではない章の内容について説明を受け、意見交換をします
 ・事前に移動する場所を決めておくとスムーズです

・ブレイクアウト③ もう片方のゼミが別のグループに移動 (25分)
 ・ブレイクアウトルーム①に全員戻り、先ほど移動しなかったゼミが移動を行います
 (先ほど移動したゼミ生は、元の部屋に戻り、今度は説明を行う番です)

・ラップアップ(20分)

※ちょうど2時間で組みましたが、時間前後させることは可能だと思います。

設計意図

いくつか設計意図があります。

まず、ブレイクアウトルーム①では、同じ担当者同士で話を行うことで自分の理解を確認しています。
もしかしたら、間違った解釈をしているかも?という心理的ハードルを確認し合うことで抑えることを狙っています。

他方で、サボったらバレる。といった適度な緊張感も持てるようにしています。
今回橋本ゼミは3年生で、松下ゼミは4年生だったので、橋本ゼミ側の緊張感はかなり高かったかなと思います。

ブレイクアウトルーム②と③は、プレゼンをする機会と、プレゼンを聞く機会を必ず作る意図を持っています。

感想等々

松下先生とも話していたのですが、「The ゼミ」というような取り組みになったなと思います。「(難しい)本を読む」というのは、まさに人文社会科学系では当然のことではありますが、なかなかハードル高いです。

ただし、工夫次第で取り組みやすくもなるんだなと思いました。

今回扱った本は、「ソーシャル・イノベーション:「社会を変える」力を見つけるには」です。

この本は、ソーシャルイノベーションに関するテキスト的な内容です。文章は読みやすいのですが、社会科学系の文献特有の前提知識を必要とします。「ブルデューが述べるように・・・」のような記述が出てくるわけです。ですので、実はこの本のみを「読めた」と思っても、前提知識を理解していなければ「読めていない」とか、「誤読」の可能性があり、実に議論にふさわしい内容になっているかなと思います。(レジュメ残っているので、誤読等は確認していきます)

この本は18章あるので、ちゃんと読むにはゼミであれば半期必要だなと思いますし、集中的に読書会としてやろうとしても1日かかるかなと思います。もちろん、今回の取り組みで「読めた」とは言えないかも知れませんが、実質的に1コマ分の時間で多くの章について理解できたと思うので、この後さらに知識を深めていくことができるのでは?と期待しています。

なお、これらの企画は松下先生との打ち合わせを経てできたものです。また、お気づきの方もいるかと思いますが、ABD(アクティブブックダイアログ)やワールドカフェにインスパイヤされたものです。

もし、やってみたいという方がいらっしゃったら、ご自由にお使いください。何かの参考になったら幸いです。
なお「やってみたよ」という方がいらっしゃったら、ご連絡いただけると大変嬉しいです。

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この記事を書いた人

産業能率大学情報マネジメント学部 准教授 橋本諭(はしもと さとし)。
研究テーマは、ソーシャルビジネス、人材育成を扱っています。

橋本 諭

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