OJTにおける教育的瞬間

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OJTの重要性は、誰もが認める事でありますが、その一方で、仕事の中で物理的に「見ること」が出来なかったり、「かまっていられなかったり」、「手取り足取り」ではできない等、「できない理由」は多々あります。

それ自身の善し悪しはさておき、OJTはどうすれば効果的になるのでしょうか。当然、様々な要素がありますが、ここではひとつの要素を紹介します。

教育的瞬間とは

教育学者のヴァンネマンは、「何らかの教育的な働きかけをする瞬間」の事を教育的瞬間と呼んでいます。

どんな時に誰にでも効く魔法の手法があれば良いのですが、教育の手法はいつも「状況や人に依存」します。効くときもあれば効かない時もあるということで、教育的瞬間とは、適切な教育を施す事により成長が促されるタイミングのようなものがあるという事です。

逆に言えば、それまで全く効果がなかった事であっても、ある瞬間をとらえることが出来れば、突如として効果を発揮するという場面があるという事です。※1

OJTにおける教育的瞬間

OJTについて考えるならば、この「教育的瞬間」をいかに見極めて、その際適切な「指導」ができるかに掛かっているととらえる事ができるでしょう。

まずは、「教育的瞬間」を見極めるという事です。

一般論ではありますが、プレゼンの仕方について考えてみましょう。「プレゼンの骨子を作る」「資料化する」「リハーサルを行う」「顧客(上司)向けにプレゼンを行う」というようなプロセスがあったとすると、教育的瞬間になり得るのは、実際に「経験」を積む「プレゼンを行う」というタイミングだと思います。

プレゼンの骨子を作っている段階で、「プレゼンというものはなあ」と言ったところで、「うるさいオヤジ」としか認識されないでしょう。一方、実際に経験を行った後であれば、「顧客の反応や結果」など、外部からの無言のフィードバックもあるため、「アドバイスを聞いてみよう」というスタンスになれるのではないかと思います。

しかしながら、プレゼンが終わった2週間後に「あのときのプレゼンだが」と言われた所で、「はて?」という印象を与えてしまうことになるだけです。その意味では、本当に「瞬間」である訳です。

以前、コンサルティング会社に勤めていたときには、客先からの帰り道に喫茶店での何気ない雑談がとても得るものがありました。きっと、上司は「意図して」行っていたのでしょう。それは、帰社してからでは遅いのです。

どのような振る舞いが求められているか

また、教育的瞬間に何をするのかもひとつの観点です。
「教えた」から「育つ」のであれば、誰も苦労しません。

振り返ってみれば、「あのときの、あの何気ない一言で、仕事への見方が大きく変わった」というようなことはないでしょうか。その「何気ない一言」は、間違い無く教育的瞬間における働きかけだと言えるでしょう。

前述のプレゼンであれば、「あのとき、お客さんは何を考えていたのだと思う?」のような問いかけが有効かも知れませんし、場合によっては「やって見せる」事が有効かも知れません。しかし、何らかの形での「働き掛け」が必要だと思います。それは、一人では登れないような所にそっと足場を掛けてあげるようなものではないでしょうか。

なお、ここまではあくまで一般論で記述しています。前述した通り、状況や人に依存します。ですから、職種や業種により異なる事でしょう。自業界における、自社における「教育的瞬間」とはどういうときか、またその際どういった働きかけが必要なのかというものを見つける必要があると思います。※2

中小企業における示唆

あなたの会社において、「人が育つ瞬間」はどういったときでしょうか? また、そのときにはどういった「経験」や「働き掛け」が有効だったかは共有されていますか?

きっと、「人が育つ瞬間」はたくさんあるのだと思います。それを無駄に消費していないでしょうか。

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※1 インストラクショナルデザインの考え方では、学習者に「レディネス」があるかが重要であり、さらに指導するタイミングでは「即時フィードバック」が有効であるとされています。

※2 熟達化(人がいかに成長するか)の研究によれば、業種ごとに異なるとされています。<参考文献>経験からの学習-プロフェッショナルへの成長プロセス-

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この記事を書いた人

産業能率大学情報マネジメント学部 准教授 橋本諭(はしもと さとし)。
研究テーマは、ソーシャルビジネス、人材育成を扱っています。

橋本 諭

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