翻訳に参加したOECD「若者のキャリア形成」スキルの獲得から就業力の向上、アントレプレナーシップの育成へ が発売されました

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 OECD(経済協力開発機構)が定期的に発表している報告書を翻訳する機会に恵まれました。本日、明石書店より【「若者のキャリア形成」スキルの獲得から就業力の向上、アントレプレナーシップの育成へ】が発売になりました。
 監訳者の実践女子大の松下先生、明星大学の菅原先生にお声がけ頂きまして、貴重な機会を得ることができました。改めて感謝致します。

 amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/4750345156
 出版社:http://www.akashi.co.jp/book/b287386.html

 

 どんな本かを紹介するために、少し長いですが序章から引用いたします。

 学校から仕事への移行が容易であったことなど一度もないが、OECD諸国の数多くの若者にとって、それは不可能に近いまでになってしまっている。2008年の世界的な経済危機の7年後において、OECD諸国の16歳から29歳の 3,500万人以上が、雇用、教育、訓練のいずれもなされていない。実際に、若者は雇用されない可能性が前の世代の労働者よりも2倍程度はありそうである。なんとか仕事を見つけることができた若者の多くは、学校時代に学んだスキルを使用していない。また雇用されている若者のうち4人に1人は臨時・派遣雇用契約で働いており、そのためにキャリアを積む機会、あるいはさらに訓練に参加する機会でさえも制限されることになっている。若者の自立した労働生活のために、望ましいスタートを切らせることは、今日すべてのOECD諸国において主要な課題となっている。

 
 この文章からも分かる通り、OECD諸国の学校から仕事への移行(トランジション)についての報告書です。日本でも2008年のいわゆるリーマン・ショック以降は就職難となりましたが、OECD諸国、特にヨーロッパは大きな打撃を受けています。そういった状況の中で、どういったトレンドがあるか、各国がどんな対策をうっているかがまとまっています。

 一概にまとめることはできませんが、日本よりも相当大変な状況(相対的には、日本は良い状況)であるということがわかると思います。特に、日本の新卒採用などは、極めて好条件だということがわかると思います。

 私は、第5章を担当いたしました。
 世界の潮流について、日本語で概観したいという方には、ちょうどよい一冊になっているかと思います。

 なお、本書は2015年版の翻訳ですが、原著の方は2017年版が発表されています。こちらは、もちろん英語です。

【目次】
————–
 序文
 謝辞
 読者ガイド
 要約

第1章 若者のスキルと就業力を向上させるための総合戦略デザイン
 社会全体の包括的成長のための若者の雇用改善
 より良い状況を生むための総合的かつ一貫した戦略
 若者のスキルや就業力に関するOECD諸国の近年の取り組み
 対応策の進め方
  ・若者のスキルと教育の改善
  ・若者の労働市場への受け入れ
  ・職場における若者のスキル活用
  ・課題相互の関連性
  ・若者のスキルと就業力を強化するための対策の統合

第2章 若者の教育とスキル育成に関するトレンド
 ハイライト
 教育、スキル、就業力
 生徒の成果における平等性
 仕事の世界への準備
  ・職業教育・訓練
  ・高等教育
  ・職場に基盤を置く学習
 若者の就業力に関するスキルスコアボード
  ・若者はどれほど習熟しているか?
  ・スキル開発は包括的なものか?
  ・若者はどのようにスキルを開発するのか?

第3章 若者の教育とスキル改善に向けた政策
 すべての若者が十分なスキルを習得して卒業できるようにする
  ・スキルに対する総合的アプローチ
  ・質の高い就学前教育を全員に
  ・低スキルと学校中途退学の予防
  ・多様かつ柔軟な成功への道
 労働市場のニーズに対する教育制度の反応性を高める
  ・質の高い職場学習プログラム
  ・職場学習の支援
  ・高等教育における助成金の役割
  ・進路指導
 政策のキーポイント

第4章 若者の労働市場への統合のトレンド
 ハイライト
 若者の労働市場への統合
  ・学校から仕事への移行
  ・マクロ経済の状況、教育、労働市場の組織が果たす役割
  ・臨時・派遣雇用の役割
  ・ニートになる可能性の高い若者
 ニートと労働市場への長い道のり
  ・ニートのスキル
  ・失業中で非活動的なニート
  ・さらなる障壁に直面する若者
 若者の就業力に関するスキルスコアボード
  ・若者は労働市場に十分受け入れられているか?
  ・ニートは労働市場にどの程度近いか?

第5章 若者の労働市場への統合に向けた政策
 包括的戦略の開発
  ・「全政府を挙げた」アプローチ
  ・「ヨーロッパ若年者保証」
  ・スキル評価に基づく指導、カウンセリング、目標達成のシステム
  ・地域関係機関の役割
 学校から仕事への移行をスムーズにする
  ・労働市場の状況
  ・公教育外での職業経験
 ニートの人々を教育や労働市場に(再)参入させる支援
  ・さらなる教育の必要性
  ・積極的労働市場政策
  ・社会的保護システム
 政策のキーポイント

第6章 仕事での若者のスキル使用のトレンド
 ハイライト
 職場での若者のスキル使用
  ・全般的なトレンド
  ・デジタルスキル
  ・単純作業
 仕事のミスマッチ
 スキルの不十分な使用と仕事のミスマッチの影響
 起業
 若者の就業力に関するスキルスコアボード
  ・職場はスキルの使用を奨励しているか?

第7章 若者のスキルを仕事に使用することに向けた政策
 スキルのミスマッチを減らし、若者のスキルをよりよく活用する
  ・新しいテクノロジーのインパクト
  ・スキルと資格
  ・国外で取得したスキルやインフォーマルな資格の認証
  ・地理的なミスマッチ
  ・競業避止条項の効果
  ・労働組織とマネジメントポリシー
 アントレプレナーシップの障壁を取り除く
  ・アントレプレナーシップ教育
  ・事業創造の障壁
 政策のキーポイント

 監訳者あとがき

コラム・図・表の一覧

――第1章 若者のスキルと就業力を向上させるための総合戦略デザイン
コラム1.1 OECD「若者のためのアクションプラン」の要点
コラム1.2 労働市場においてどのようなスキルが求められているのか
コラム1.3 教育、スキル、就業力の相乗作用
コラム1.4 若者の就業力に関するスキルスコアボード:方法論
図1.1 若者の失業は、高いレベルに到達している
図1.2 大部分のOECD諸国では、若者のほうが貧困リスクにさらされている
図1.3 人口全体に占める若者の割合は、2020年までに減少すると予測されている
図1.4 認知的スキルの低い若者はあまりに多い
図A 低い読解力を有する確率:教育達成度別、社会経済的背景別、スキル使用別にみた相対関係
表1.1 若者の就業力に関するスキルスコアボード:要約指標

――第2章 若者の教育とスキル育成に関するトレンド
図2.1 雇用されておらず教育も訓練も受けていない若者(ニート)の割合(学歴別)
図2.2 新規卒業者における平均的な数的思考力(教育段階別)
図2.3 教育年数と読解力習熟度が労働市場への参加に与える効果
図2.4 読解力と数的思考力の低い若者
図2.5 基本的なICTスキルを欠く若者
図2.6 後期中等教育を修了する前に中途退学した若者
図2.7 後期中等教育を修了しなかった若者と後期中等教育の学位を取った後に進学しなかった
若者の数的思考力
図2.8 雇用されておらず教育も訓練も受けていない若者(ニート)の後期中等教育卒業者の割合(プログラム別)
図2.9 中等後職業教育・訓練プログラム卒業者の相対的な賃金
図2.10 中等後職業教育・訓練プログラムにおける生徒間の数的思考力
図2.11 後期中等教育の職業教育・訓練プログラムから中等後教育への移行
図2.12 さらなる教育に参加することにおける後期中等教育の学位の効果
図2.13 学業と仕事を結びつけている生徒の割合
図2.14 後期中等教育の職業教育・訓練プログラムの生徒(職場プログラム別)
図2.15 専攻分野内外で仕事と学業を結びつけている中等後教育の生徒
図2.16 見習い実習内外で仕事と学業を結びつけている後期中等教育の職業教育・訓練部門の生徒によるスキルの使用
図2.17 専攻分野内外で仕事と学業を結びつけている中等後職業教育・訓練プログラムの生徒と一般プログラムの生徒のスキルの使用
表2.1 若者の就業力に関するスキルスコアボード:若者はどれほど習熟しているか
表2.2 若者の就業力に関するスキルスコアボード:スキル開発は包括的なものか
表2.3 若者の就業力に関するスキルスコアボード:学生はどのようにスキルを開発するのか

――第3章 若者の教育とスキル改善に向けた政策
コラム3.1 教育制度はスキルに対してどのように、よりホリスティックなアプローチを適用しているか:各国の事例
コラム3.2 幼児教育・保育の質の向上:各国の事例
コラム3.3 低スキルと学校中途退学のリスクを有する若者を特定する:各国の事例
コラム3.4 予防的側面から中途退学と対峙する:カナダ・トロントのリージェントパーク「パスウェイ・トゥ・エデュケーション」プログラム
コラム3.5 複数の進路を提示し、学習コース間の円滑な移行を可能にする:各国の事例
コラム3.6 「スキルパスポート」制度を通じたスキルの公式評価向上を目指して:各国の事例
コラム3.7 イギリスの大学における就労スキルのための新提案
コラム3.8 教員、雇用主、その他の利害関係者間の連携を促進し、職業教育・訓練を労働市場のニーズに合わせる:各国の事例
コラム3.9 助成金制度を通じた職場訓練の開発や供給の奨励:各国の事例
コラム3.10 平等な機会と労働市場での強力な成果を確保するための大学助成金制度の設計:各国の事例
コラム3.11 オープンエデュケーションを通じて労働市場のニーズに対する反応と平等なアクセスを確かなものにする
コラム3.12 進路指導ツールとしての労働市場情報の開拓:各国の事例
図3.1 就学前教育歴の有無による数学的リテラシーの得点差
図3.2 高等教育に進学した学生のうち学位を取得せずに中途退学した学生の割合

――第4章 若者の労働市場への統合のトレンド
コラム4.1 雇用されておらず教育も職業訓練も受けていない若者(ニート)の割合の測定
図4.1 雇用と教育の状況による若者の割合の変遷
図4.2 雇用されておらず教育も職業訓練も受けていない若者(ニート)の割合
図4.3 若者と働き盛りの労働者の雇用率と失業率
図4.4 臨時・派遣雇用の若者
図4.5 就業時のスキル使用(雇用契約別)
図4.6 若年者雇用の変化(雇用契約別)
図4.7 雇用されておらず教育も職業訓練も受けていない若者(ニート)の割合(認知的スキルのレベル別)
図4.8 失業率の推移(学歴別)
図4.9 雇用されておらず教育も職業訓練も受けていない若者(ニート)の教育達成度
図4.10 雇用されておらず教育も職業訓練も受けていない若者(ニート)の認知的スキル
図4.11 雇用されておらず教育も職業訓練も受けていない若者(ニート)の活動状況
図4.12 雇用されておらず教育も職業訓練も受けていない若者(ニート)の読解力の平均得点
図4.13 雇用されておらず教育も職業訓練も受けていない若者(ニート)の男女別の割合
図4.14 雇用されておらず教育も職業訓練も受けていない若者(ニート)の読解力の平均得点(男女別)
図4.15 雇用されておらず教育も職業訓練も受けていない若者(ニート)の両親の移民背景
図4.16 メンタルな問題を持つ若者の割合
表4.1 若者の就業力に関するスキルスコアボード:若者は労働市場に十分受け入れられているか
表4.2 若者の就業力に関するスキルスコアボード:ニートは労働市場にどの程度近いか

――第5章 若者の労働市場への統合に向けた政策
コラム5.1 学校から仕事への移行を容易にするための包括的な戦略の採用:「ヨーロッパ若年者保証」の事例
コラム5.2 若年者保証の一環として、すべての若者を支援対象とし、早期介入を発展させること:各国の事例
コラム5.3 低スキルの若者や恵まれない若者の雇用を後押しする地域の行動:地域レベルの事例
コラム5.4 より健全な雇用保護法制に向けての動き:各国の事例
コラム5.5 職業教育(セカンドチャンス)プログラム:各国の事例
図5.1 若年ニートと若年就業者の読解力と問題解決能力の差
図5.2 OECD諸国における試用期間
図5.3 若年ニートの求職の割合(読解力レベル別)
図5.4 調査前4週間に公共雇用サービスで仕事を探した失業者の割合(年齢層別)
図5.5 雇用されておらず教育も受けていない若者の割合(調査前12か月間の教育・訓練への参加状況別)
表5.1 教育後のインターンシップの役割

――第6章 仕事での若者のスキル使用のトレンド
図6.1 職場における認知的スキルの使用(年齢層別)
図6.2 職場におけるスキルの使用(スキルレベル別)
図6.3 コンピュータの使用経験がない若者
図6.4 若年労働者の回答に基づくICTスキル不足
図6.5 職場でのスキルの使用(職場でのコンピュータ使用経験別)
図6.6 単純な仕事や新たに学ぶことのない仕事に従事する労働者の割合
図6.7 単純な仕事や新たに学ぶことのない仕事に従事する労働者の割合(数的思考力のレベル別)
図6.8 フォーマル・ノンフォーマルな成人教育・訓練への参加の可能性と単純作業遂行の関連
図6.9 ミスマッチ(ミスマッチタイプ別・年齢層別)
図6.10 若者の失業率の地域差
図6.11 賃金とミスマッチ(ミスマッチタイプ別・年齢層別)
図6.12 自営業に対する若者の意見(ヨーロッパ諸国)
図6.13 自営業に興味がある個人の割合(ヨーロッパ諸国)
図6.14 若年労働者と働き盛りの労働者に占める自営業者の割合
表6.1 若者の就業力に関するスキルスコアボード:職場はスキルの使用を奨励しているか

――第7章 若者のスキルを仕事に使用することに向けた政策
コラム7.1 労働市場のニーズと若者のスキルをマッチさせるイニシアチブ:各国の事例
コラム7.2 認知的スキルと国外の資格:各国の事例
コラム7.3 若者のスキルを有効に活用するための労働組織の実践:各国と企業の事例
コラム7.4 すべての教育段階における統合的なアントレプレナーシップ教育:各国の事例
コラム7.5 若いアントレプレナーに対する精神的支援:各国の事例
図7.1 若年労働者の労働組織に対する認識(ヨーロッパ諸国)

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この記事を書いた人

産業能率大学情報マネジメント学部 准教授 橋本諭(はしもと さとし)。
研究テーマは、ソーシャルビジネス、人材育成を扱っています。

橋本 諭

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産業能率大学 橋本ゼミ
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