「成長したい」という人は、採用していい人なのか? 採用研究について考えたー成長は目的か手段かー

 企業選びなどの際に学生側の基準として掲げられることが多いキーワードに、「成長」があります。「成長できる環境」とか「研修制度がしっかりしている」等が希望として掲げられたりします。その一方で聞く話として「そうやって成長したいとか言ってきた人ほど、やらないよね」といいます。統計的根拠のあるような話ではありませんが、採用担当者や育成担当者の方からよく聞く話です。

 その前段階である「大学生」もやっぱり「成長したい」といいます。学生ですから、当たり前といえば当たり前ですが。しかし、少し違和感のある言い方だったりします。

 現在、ゼミ生とある議論をしています。きっかけは、横浜国立大学の服部先生のFB上でのこちらの書き込み。

大学2年生のゼミナール選考シーズンが始まります。企業の採用とは大分意味合いが異なるわけですが、それでも、採用研究からの知見はかなり役に立つので、それらをふんだんに活用して進めていきます。①経営学部内での服部ゼミのポジションを分析して…

Posted by 服部 泰宏 on 2015年4月19日

ある大学のある先生が、ゼミ生の選考で、「朝起きてから、いまここにいたるまで、あなたが関わった企業をできる限りあげなさい。そして、その企業といかなる意味で関わったのか、分かりやすく簡潔に書きなさい」という質問をなさっていという話を聞いた。経済・経営系のゼミ選考の場面で投げ掛ける質問としては、なかなか秀逸だと思った。

Posted by 服部 泰宏 on 2015年5月19日

 先生は、「採用学」という企業の採用活動に関する研究を行われていて、その知見を活かしてゼミ募集も行われています。本学でも現在、ゼミ募集の時期になっていますので、ゼミ募集のためではなく、ゼミ募集というきっかけを活かして、企業の採用活動について勉強しようと有志を何名か集めて議論をしています。(ちなみに、欧米ではリクルートメント研究という一分野となっていますが、雇用環境、法制度、雇用慣行等の影響を受けるので国による違いが出やすい分野です)

 そんな議論の中で出てきたのは、「成長したい人」というキーワードです。つまり、「成長したいと思っている人には(ゼミに/会社に)入ってきてもらうべきだ」 という仮説です。

 議論の内容は長くなりますので割愛しますが、結論として出たのは「条件付きのYES」です。成長したいが手段であればOK。目的であればNOということです。

  • 成長というのは、いつの時でも「良いこと」ではないのではないか?
  • 成長が必要になるのは、何か「必要性」のようなものがあるのではないか?
  • 必要性が伴わない「成長」は、「成長したいと言っておけばいい」という思考停止ではないか?

 一言で言えば、成長は手段であり目的ではない。成長が必要になるのは、何らかの目的(必要性)があるとき。その目的があるとき、また企業(ゼミ)のビジョンと合致したときであれば、「成長したいという人」は採用するのが良いのではないか?

 何らかの問題に直面していて、その解決に必死になっている状態であったとき、手段として自分やチームが「成長する」ことは必要なことだと思います。単純に言えば、「目の前の○○さんを助けたい」といったような目的です。

 逆に言えば、なんの目的や必要性もないのに「成長したい」というのは、「成長したいと言っておけばいい」とか「(努力はしたくないけど)成長した後のことを妄想している」とか、「成長できたらいいな?」という淡い期待なのではないか? たとえば、「今、なんとなくうまくいかないのは、成長が足りないせいで成長さえすれば何とかなるだろう」と言ったような話ではないか。

 といった、議論になりました。一番初めの話に戻れば、成長したいという人は、「したいなあ」「できたらいいな」と思うのであって「やらなくては」とはなっていない人が多いので、実際環境が与えられてもやらないのではないか。そんな議論となりました。あっ、もちろん、自分たちができているかどうかとは違う話です。

 これは、本当に議論のさわりですので、もう少し深めた上で、服部先生やゼミの方々と議論できることを楽しみにしております。

 ちなみに、元LINEの森川社長、DeNAの南場さんは対談で以下のように語っています。

森川「自分の成長だへちまだなどという余裕がなくなるくらい必死になって仕事と相撲をとっている社員ほど、結果が出せる人材へと、驚くようなスピードで成長するのである」。南場さん、いかがでしょうか?

南場 学生さんと話していると、「自分が成長できる会社を選びたい」という人が多いんですよね。もちろん成長はすべきだと思うし、考え方としては間違ってはいません。けれども、入社初日から給料をもらっている以上、プロフェッショナルとして自分を追い込んで成果を出すのが第一にすべきことで。

森川 会社は学校じゃないですからね。「与えられる場所」ではないというか。

南場 そうそう。必死になるからこそ、結果として成長するわけでしょう? どうも、「成長を考えるほど成長しない」というパラドクスがあるような気がするんですよね。
【南場智子×森川亮 特別対談(1)】「成長したい」という人ほど、成長できない理由|シンプルに考える|ダイヤモンド・オンライン

別の話ですが、こんな話もあります。性格テストを用いて採用を行う是非などはあると思いますが、こういった研究いくつか見ますね。少なくとも、成長したとして嘘付く人とか、裏切る人と一緒に仕事はできないですよね。
 

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橋本 諭

橋本 諭

産業能率大学情報マネジメント学部 准教授 橋本諭(はしもと さとし)。
研究テーマは、ソーシャルビジネス、人材育成を扱っています。

橋本 諭
Twitter:@satoshi_hashimo
Facebook:satoshi.hashimoto1
橋本 諭

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