404 NOT FOUND | 産業能率大学 橋本ゼミ https://www.hashimoto-lab.com Learning is Entertainmentをビジョンに、しなやかなソーシャルイノベーションの実現を目指しています Mon, 18 Mar 2024 09:42:26 +0000 ja hourly 1 https://www.hashimoto-lab.com/wp-content/uploads/2019/07/cropped-611a31a252699e236815e9cd12c6ac25-185x185.png 404 NOT FOUND | 産業能率大学 橋本ゼミ https://www.hashimoto-lab.com 32 32 ゼミ10期生の研究内容と卒論集のまえがき https://www.hashimoto-lab.com/2024/03/9048 Mon, 18 Mar 2024 09:42:24 +0000 https://www.hashimoto-lab.com/?p=9048 先日、橋本ゼミ10期生が卒業していきました。卒業生の今後の活躍を心から祈っています。

卒業研究の内容をタイトルのみですが、こちらにまとめます。今年も多様なテーマとなりました。

卒論(卒業研究)一覧

<卒業論文>
映画「パッドマン」から知るジェンダー問題 今野 日南子

キャプテンが周囲から求められる役割の考察
―キャプテンが苦しむ組織はキャプテンだけが悪いのか― 鈴木 滉人

今後の中井町に求められる行政施策 ~若年層が魅力に思うまちづくりとは~ 次田 結音

自粛期間が明けて問われた合宿の調査
―意思決定者である教員のインタビューから現状を知る― 長田 源生

ローカルメディア「My Playful Town」の運営における主体的行動について
―約二年半の自身の活動を振り返って― 山内 愛弓

KPOP推し活における消費行動の合理性の研究
―KPOPオタクはなぜCDの大量購入を続けているのか― 山口 翼

ハンドボール継続の要因 ~経験者へのインタビュー及びアンケート調査をもとに~ 福島 健五

<卒業研究>
新たな AR 表示方法にむけた画像認識技術の調査 宍戸 俊介
UFC の強みと課題を明らかに 過去と現状を振り返る 永山博基
大学スポーツのオートエスノグラフィー ―サッカー部での活動を事例として― 外薗隆一

卒論集のまえがき(抜粋)

 2020年4月入学の皆さんは、まさに新型コロナと共にスタートしたことになります。授業はオンラインになり、様々なイベントが中止になるなど大きな影響を受けた世代でしょう。4年生の最後の1年でゼミ合宿や瑞木祭が実施できて本当に良かったなと心から思っています。大学に期待されることがいくらかでも味わってもらえたのではないかと思います。

 大学の役割は様々なものがありますが、例えるならば複数の路線が乗り入れるターミナル駅のようなものだと考えています。その意図は、大きく3つあります。

 一つは、複数の路線が乗り入れることから、乗り換えが可能であるということです。つまり、自分の進路を選択できるようになることです。大学に進学したからこそ、また産業能率大学や橋本ゼミだったからこそといった進路を選べたとしたら、こんなにうれしいことはありません。

 もう一つは、自分が乗ってきた路線に気づくことです。大学生として入学した際、みな同じようにスタートしているように感じますが、それまでに歩んできた軌跡は異なるのです。そして、その軌跡こそが、本来的な意味のキャリアであり、故にその後の未来を規定する(してしまう)力を有しているのです。自分が乗っている路線(レール)は、意図しなければそのまま走り続けることになります。自らの意思で乗り換えられる機会と能力を提供するというのが、2つ目の役割です。もちろん、様々なことを考えた結果、そのまま同じ路線(レール)を走り続けるという選択も素晴らしいものです。大事なことは、自分の乗っている路線に自覚的になることなのです。

 最後、多くの多様な人達が集まるのがターミナル駅です。すなわち、多様な人達との出会いは大事な大学の役割でしょう。大学やゼミのメンバーとの出会いが皆さんたちにとってかけがえのないものであることを願っています。

 コロナは大学が果たすべきこうした3つの役割に対して、大きなダメージを与えたように思います。表面的には傷は見えにくいです。しかし、これらの3つの役割はあまりに「コスパ」が悪く見えます。実際にはこれ以上パフォーマンスが高いものはありませんが、「就活」などのようにわかりやすくないため理解されにくいのかもしれません。

 今回、卒業論文の執筆に伴奏しながら、この3つの役割に皆さんたちが気づき、そして多くを得ようとしていること、そして自ら変化しようとしていることに感銘を受けていました。多くの論文が自らの過去をアカデミックな専門知識を身につけ自分なりに使いこなそうとしながら振り返るものになっていました。また、メンバー同士での励まし合いも心強いものでした。それこそがまさに大学の役割であると言えるでしょう。

 さて、ターミナル駅で得るべきことは得たと思います。ここからは新たな路線に乗って、それぞれの未来に進んでいってほしいと思います。きっと素晴らしい未来が待っていると信じています。そして、いつでも少し休みに帰ってきてください。この後も駅は同じ場所にあります。皆さんたちの旅の思い出話を楽しみにしています。

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#AI時代のコンヴィヴィアリティ 報告書まとめ https://www.hashimoto-lab.com/2024/03/9038 Thu, 07 Mar 2024 12:28:37 +0000 https://www.hashimoto-lab.com/?p=9038 橋本ゼミでは、毎年テーマを決めて研究活動を行っています。2023年度は、ChatGPTなどの生成AIが話題になっていたこともあり、#AI時代のコンヴィヴィアリティ をテーマとしました。毎年11月の学祭において研究発表を行い、そこから更に調査を進め報告書としてまとめています。

今年度の報告書がまとまりましたので、まとめの記事を作成しました。

AI時代のコンヴィヴィアリティ

AIは日進月歩で進化しています。数ヶ月前の情報はすでに化石のような状況です。

しかしながら、それを使う人間はそれほど進化するものではありません。慣れることはあると思いますが、生物学的な進化のようなものはありえない訳です。そんな中、どう慣れていくのか、つまりどうAIと共存していくのかを考える上で、イヴァン・イリイチによるコンヴィヴィアリティ(自立共生)を参考に、特に「第1の分水嶺」と「第2の分水嶺」を鍵に考えていくことにしました。

イリイチは、ある道具が人間の役に立つ段階を「第1の分水嶺」と呼び、その後道具が進化する中で人間にとって害悪となってしまう段階を「第2の分水嶺」と呼びました。

私達は、AIはすでに「第1の分水嶺」を超えていると判断し、日進月歩の進化の中で「第2の分水嶺」を超えてしまうのではないか? もし超えてしまうとしたらどんなことがあり得るのか? を考えていくことにしました。

具体的には、AIと共存することを考え、徹底的に利用者として使ってみるということを行っています。そして、想像しうる中での極端な使い方を行うようにしました。

全体像

どんな活動を行ったのかは、以下の記事でまとめています。

自分たちにとっても試行錯誤の中で取り組んだ内容を、インタビュー形式でまとめています。

AIで理想の恋人を作る

極端な使い方の一つとして、画像生成AIを使って理想の恋人を作ろうという企画を行いました。メンバーはプロンプトを様々な工夫することにより、来場者の希望に沿った画像を生成できるようになっていました。

その過程で「オノマトペ」に着目した記事がこちらです。

プロンプトエンジニアリングと呼ばれるものですが、オノマトペがどう反映するのかについて考察しています。

AIに占いをやらせてみよう

もう一つ極端な使い方として、AIに占いをやらせてみるというものを行いました。

ChatGPTを使って手相占いをやってみました。こちらは、同じ手の画像を入力しても、そのときによって回答が異なるなど占いとしては精度が高くありません。もちろん、ChatGPTの原理的にも占いができるとは考えにくい訳ですが、来場者は「当たっているかも」のように占いとして信じるような反応を示される方がいらっしゃいました。

そこから、なぜだろうと考察したものが以下の内容です。

そして、ChatGPTをチューニングすることで本当に手相占いができるようになるのでは?と追求してみたものが次の内容です。

AIは相談相手になるか?

近しい内容として、ChatGPTに相談を持ちかけてみるということも行いました。こちらももちろん相談に乗ってくれている訳ではありませんが、それっぽい回答が返ってきます。さらにそれっぽさを高めて見たらどうなるか?を考えたのが次の内容です。

AIによる画像認識をエンターテイメントにするには?

画像同士が同一人物かどうかを判定するAIを用いて、来場者に楽しんでもらうコンテンツを制作しました。

本来とは違う目的ではありますが、敢えて使ってみることでわかったことを考察しています。

地域の活動

橋本ゼミでは、一つの軸として地域との連携も行っています。

#MyPlayfulTown
MyPlayfulTown(マイプレイフルタウン)は、自らの町を面白がる人たちによるまち・ひと・ことの魅力を再発見するためのメディアです 新着記事 人気記事 Twitter Tweets by myPlayfulTown Instagram

その一環として、地域の獣害問題、そして流行になっているジビエに関連して、伊勢原で取れた鹿肉を使ったジビエカレーを販売しました。

https://myplayfultown.hashimoto-lab.com/6593

1食1000円という価格でしたが、100食を超える売上を記録し、生産者や市の観光協会の方より「過去最高記録であり、信じられない」といった反応を頂きました。

そして、この獣害やジビエについて更に調べた内容が以下のものです。

おわりに

冒頭でも述べたようにAIは進化のスピードが早く、すでに過去の情報になっているものもあるかもしれません。それでも、やってみることでわかることはたくさんあったなと思っています。

現時点で第2の分水嶺を超えているかどうかは断言できません。しかし、車が交通事故を起こしてしまうように使い方を誤ると弊害が出ることは間違いないと思います。

AIの進化にどう共存していくのかは、今後ともに課題であると考えます。

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AI手相占いをやって分かったAIの信頼性とブラックボックス問題 https://www.hashimoto-lab.com/2024/03/8975 Wed, 06 Mar 2024 06:18:49 +0000 https://www.hashimoto-lab.com/?p=8975 はじめに

こんにちは。橋本ゼミ12期生の束田、百合岡です。今年の大学祭で、私たちはAIを用いた手相「占い」を行いました。具体的には、参加者の手の画像を撮影し、それをChat GPTに入力して占い結果を得ました。この手相占いを通じて、私たちはAIと人間の信頼関係について興味を持ちました。

この記事では、人はなぜAIを信じるのかについて考えていきます。

AIによる「占い」

Chat GPTとは?

Chat GPTはアメリカのAI研究所であるOpenAIにより開発されたAIチャットボットです。まるで人間が書いたような自然な文章と高精度な回答により、話題となっています。

ChatGPTは、大量のテキストデータを学習して、人間のような文章を生成するAIです。インターネット上の何十億ものページから、特定の文章の後にどのような単語が続くかを学習しています。質問をすると与えられた文章に基づいて、次に来る単語の「確率」を計算し、その確率に基づいて次の単語を選びます。しかし、常に最も高い確率の単語を選ぶのではなく、時にはランダムに他の単語を選ぶことで、より自然で興味深い文章を生成するようになっています。このプロセスを繰り返すことで、ChatGPTは人間のような文章を作り出すことができるのです。

「占い」について考える

Chat GPTの仕組みについての理解を深めた上で、次に占いに焦点を当てます。先に述べたChat GPTの動作原理を踏まえると、AIが生成したのは一般的な占いとは異なり、占い風に出力したただの文字列であることが理解できます。ここでの一般的な占いとは、個人の情報を基に特定の手法で未来の出来事を予測する行為を指します。例えば、手相占いやタロットカード、四柱推命などが挙げられます。

人はなぜAIを信じるのか

私たちが大学祭で手相占いを行った際、参加者にアンケートに答えてもらいました。そのアンケート結果を確認すると、50人中27人がAI 占いを信じると回答しました。ではなぜ、本当の占いをしていないにも関わらず、人々は信じたのでしょうか?

主に3つの理由があると私達は考えました。

まず、1つ目の理由としてAIの精度が挙げられます。2-1で述べたように、AIは学習データから確率に基づいて単語を選び、文章を生成します。これにより、AIが単にそれらしい文章を書くだけの存在と誤解されることもあるかもしれません。しかし、実際には、大量のデータを学習し、記憶し、判断する能力がAIの強みであり、特に知識に基づく問題においては非常に優れています。以下に具体的な例をいくつか挙げます。

脳腫瘍の診断では、脳腫瘍の画像診断においてAIがプロの医師よりも優れていることが示されています。具体的には、15人のベテラン医師は66%の精度で診断しましたが、BioMindというAIは87%の精度で診断しました。また、脳内の血腫拡大の予測では、ベテラン医師の診断精度は63%であるのに対し、BioMindは83%の精度を達成しました。

碑文解読の分野では、DeepMindの碑文解読AI「Ithaca」が古代ギリシャの断片化した碑文を復元しました。Ithacaは単体で62%の精度で碑文を復元し、考古学者がIthacaを使用することで精度は72%に向上しました。さらに、Ithacaは碑文が執筆された年代を平均して30年の誤差で推定し、碑文の起源を71%の確率で特定しました。

法律分野においても、AIが法律家よりも優れていることが示されています。具体的には、AIは94%の精度で秘密保持契約書を処理しましたが、弁護士20人の平均は85%でした。処理速度においても、弁護士20人の平均処理時間は92分であるのに対し、AIはわずか26秒で処理を完了しました。

これらの例では、プロを超える精度を叩き出したAI もあります。このようなAIの高い精度が人々の信頼を得る要因であることがわかります。しかし、知識に基づく問題であっても間違いがあることを忘れず、鵜呑みにせず注意が必要です。

次に2つ目の理由としてAIが、何を根拠に回答しているかわからないことが挙げられます。AIの進化の歴史を振り返ると、ディープラーニング以前のAIは、専門家の知恵や技能の手順を人の手によってプログラム化していました。しかし、ディープラーニングの台頭により、AI 自ら学習するようになると判断のルールがブラックボックス化し、人間には理解しづらくなったのです。現在のAIは、多数のパラメータを駆使して複雑な判断を下しますが、その理由を人間が理解することはほぼ不可能です。そのため、AIの回答が正確であることが多いにもかかわらず、その根拠は明示されない「ブラックボックス化」された性質がAIにあるため、AIは異質な知性として捉えられ、その神秘性や権威が信頼感を生んでいるのです。例えば、将棋の世界では、プロ棋士や観戦者が将棋ソフトの評価値を信頼し、それを基準に判断するようになっています。つまり、将棋の世界ではAIの回答が専門家のそれと同等、あるいはそれ以上の権威を持つようになっているのです。

3つ目の理由として、人々のAIに対する意識がAI占いを信じるに至らしめたと考えます。

私たちはアンケートでAI占いを信じると答えた人に、さらに追加でAI占いを信じる理由を答えてもらいました。その結果、信じる理由として「何かをもとに解読していると思うため」「AIのほうが人よりもいろいろなことを知っているから。」などといった回答が多く得られました。これらの回答から参加者はAIの精度を信用していることがわかりました。加えて学習データがブラックボックスなため、AIは占いのデータを学習していると判断する人が多かったと考えられます。

最後に

AIが出した答えの根拠が分からないということは誤った判断の原因が究明しにくいため、改善が困難です。そのため、今後もこの問題に対処する必要があるでしょう。また、採用選考や医療診断など、判断の根拠を知りたい場面では、AIのブラックボックス化が問題となります。そのため私達は専門知識やAI の仕組みについて学び、AIとうまく共存していく必要があります。

参考文献

伊藤 元昭、第1回:説明もせず、責任も取らない機械を信じられますか? (1/4) 連載02 ブラックボックスなAIとの付き合い方、Telescope Magazine、2019/8/30

第1回:説明もせず、責任も取らない機械を信じられますか? (1/4) | 連載02 ブラックボックスなAIとの付き合い方 | Telescope Magazine
ナノテクノロジーと半導体技術が可能にする未来はどのような世界なのか。最前線で活躍する研究者やプロジェクトを取材し、未来社会の風景を先取りしてお届けします。
、(2023/12/20)

Stephen Wolfram、What Is ChatGPT Doing … and Why Does It Work?、Stephen Wolfram Writings、2023/2/14

What Is ChatGPT Doing … and Why Does It Work?
Stephen Wolfram explores the broader picture of what's going on inside ChatGPT and why it produces meaningful text. Disc...
、(2023/12/20)

AI Lab 編集部 | Contributor、AI研究における「ブラックボックス問題」とは何か 、 Forbes JAPAN 公式サイト、2018/2/20

AI研究における「ブラックボックス問題」とは何か | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
さまざまな産業やサービスにおいて実用化が進むディープラーニングにおいて、ひとつの課題が浮上している。すなわち「ブラックボックス」の問題だ。ディープラーニングは、さまざまなビジネスプロセスを自動化してくれる人工知能(AI)技術だが、機械が自ら...
、(2023/12/20)

Qbook編集部、AIの「ブラックボックス問題」と求められる信頼性|、Qbook、2022/10/25

AIの「ブラックボックス問題」と求められる信頼性| Qbook
AI(人工知能)は、ディープラーニング(深層学習)によって人間の判断力や思考を超えようとしています。この技術の進歩はさらなる発展・応用可能性が期待されていますが、同時に、「AIは本当に信用できるの?」という不安を生み出しました。本記事では、...
、(2023/12/20)

AIがベテラン医師よりも高精度に脳スキャン画像から脳腫瘍を診断することに成功、GIGAZINE、2018/7/4

AIがベテラン医師よりも高精度に脳スキャン画像から脳腫瘍を診断することに成功
近年のAI技術の発達には目を見張るものがあり、「人間はAIに仕事を奪われてしまうのではないか?」という危機感を持つ人も少なくありません。そんな中、「中国で行われた病気の画像診断コンテストで、AIがベテランの医師たちよりも高い精度で正しく病気...
、(2023/12/21)

DeepMindの碑文解読AI「Ithaca」で失われた碑文を72%の精度で復元することに成功、GIGAZINE、2022/3/11

DeepMindの碑文解読AI「Ithaca」で失われた碑文を72%の精度で復元することに成功
Googleの親会社・Alphabet傘下のAI企業であるDeepMindが開発した碑文解読AIにより、断片化していてとても読めない古代ギリシャの碑文を最大72%の精度で復元できたとの論文が発表されました。碑文の内容だけでなく、それが書かれ...
、(2023/12/21)

弁護士よりもAIの方が秘密保持契約書(NDA)の処理を素早く正確に行える、GIGAZINE、2018/11/5

弁護士よりもAIの方が秘密保持契約書(NDA)の処理を素早く正確に行える
契約書の自動チェックサービスを提供しているLawGeexが、AIと弁護士20人に「5通の秘密保持契約書(NDA)を処理させその精度を調べる」という調査を実施。AIの方が素早く優秀だったという結果が発表されています。
、(2023/12/21)

執筆 : 橋本ゼミ12期生 束田大空、百合岡駿也

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AI相談は本当にAIに向けて相談しているのか https://www.hashimoto-lab.com/2024/03/8992 Wed, 06 Mar 2024 06:16:34 +0000 https://www.hashimoto-lab.com/?p=8992 はじめに

みなさんは誰かに相談をしたことはありますか?

相談をするとは「問題の解決のために話し合ったり、他人の意見を聞いたりすること。また、その話し合い」とされています。例えば、誰かに悩み事を打ち明けてそれに対しての解決策を一緒に考えるといったことがあります。瑞木祭ではAI相談と題して文章生成AIであるChatGPTに悩み事を相談してみようということをやってみました。この記事ではAIに相談するということはどういうことなのかについてChatGPTを成り立たせている技術であるLLMの仕組みを出しながら説明します。

LLM(大規模言語モデル)とは?

まず、LLM(大規模言語モデル)について説明します。

LLMはコンピュータが処理する仕事である「計算量」、コンピュータに入力した文章データの情報量である「学習データ量」、ディープラーニング技術に特有のパラメータ(確率計算を行うための係数の集合体)の豊富さを指す「モデルパラメータ数」の3つが著しく巨大化することにより急速に進化していきました。

さらに、2020年にOpenAIが発表した「Scaling Laws for Neural Language Models」という論文では「計算量」「学習データ量」「モデルパラメータ数」の大きさと予測精度の間には「べき乗則」が成立すると提唱されました。

(「Scaling Laws for Neural Language Models」https://arxiv.org/abs/2001.08361

このグラフから学習するデータの量やモデルのサイズ、データ量を上げていけば予測精度が上がっていくということが分かります。そしてこちらの上限がまだ見えていないため性能は上がり続けるとされています。

このことからLLMはインプットである学習データを著しく巨大化させたことにより様々なアウトプットができるようになったモデルになっていることが分かります。

本当にAIに相談をしている?

上記のLLMの説明からChatGPTは学習データをインプットしているため答えがある問いに強いということが分かります。

ですが、実際にAI相談と題して相談を行ってみると「彼女を作る方法は?」「学年が1つ離れている人とどうやって仲良くなればいいの」といった人間ですらどう回答すればいいかわからない答えのない質問が多かったのです。

AIはこのような質問に対してもそれっぽい答えが返ってきました。

ですが、これはAIにした相談の答えなのでしょうか

一般論をデータとして収集しているためAIが質問に答えているのではなく第三者の答えを示しているという点が挙げられます。

ということは私たちがChatGPTに対して行った相談はChatGPTからの返答ではなく第三者が回答した一般論の返答を写しただけではないかということが分かります。このことからAI相談というのは成り立っているといえるのでしょうか?

どうして相談している気分になるのか

友達として出力したプロンプト

おじさんとして出力したプロンプト

今回ChatGPTで友達とおじさんの2つのバージョンでプロンプトを作ってみました。

実際に瑞木祭で友達として相談に答えてくれるプロンプトとおじさんの性格で相談に答えてくれるプロンプト(以下おじさんプロンプト)を作ってみてお客様からの反応を見ると、おじさんプロンプトの方が相談するまでの障壁がないように感じました。

それは口調から感じられる明るさに理由があると考えます。人間の第一印象は3秒程度で決まるといわれています。一度興味を持って立ち寄ってみるとおじさんプロンプトは明るい口調や語尾につくカタカナや「アセアセ」といった言葉に親しみやすさやどのような回答が返ってくるか興味が湧き、ちょっと相談してみようかなという気にさせられることが要因であると推察しています。

このようにプロンプトでどのような設定にするかを指定するとそれにあった性格や口調で回答を生成してくれるようになります。

人間は相談をする際に相談相手の階級や性格を気にして「この質問はしてはいけないかな?」「この内容は共感してくれなさそう」といったように質問内容を考えている節があると思います。それだけでなく相談相手側も答える時に相手の対応に気遣うことをして本音を吐けない、言い返すことができない場合もあります。ですが、AIはそうではありません。どんなことを聞いても回答が返ってくる安心感、階級のことを知らないフラットな関係で話せるため返ってくる言葉が辛辣であっても相談側も納得して飲み込むことができる点、第一印象だけでなく相談をする中でも明るい口調や親しみやすい単語などを用いて本来は感情があるわけではないChatGPTですが、感情が含まれているように感じる点の2つが相談している気分になりやすい理由であると考えます。

まとめ

今回、瑞木祭でAI相談と題してChatGPTによる相談を行ってみましたが、AI自体の回答ではないという点から考えるとAI相談とは呼べないものであることが分かりました。ですが、相談は行ってくれるためある意味では人間を救ってくれる存在にもなり得ます。AIの言っていることを全部鵜呑みにしてはいけないと思いますが、このツールの使い方のラインをうまく定めることができれば様々な分野で応用ができるのではないかと感じました。

執筆:橋本ゼミ12期生 佐藤大斗

<参考文献>

「大規模言語モデル」参照日2023年12月15日

大規模言語モデル | 用語解説 | 野村総合研究所(NRI)
野村総合研究所(NRI)の公式ホームページです。NRIからの提言や調査・レポート、商品サービス、ITソリューション事例、IR情報、採用情報、CSR情報などを掲載しています。

「LLMとは?ChatGPTとの違いは?ビジネス活用方法・種類・代表サービスを徹底解説!」参照日2023年12月15日

LLMとは?ChatGPTとの違いは?ビジネス活用方法・種類・代表サービスを徹底解説! - AI Market
大規模言語モデル(LLM)の活用に迷っていませんか?この記事では、LLMの基本から具体的な導入計画、代表サービスや種類、コスト分析までを丁寧に解説します。LLMの魅力を理解し、ビジネスへの活用方法を探る手引きになることでしょう。

「生成AI、対話型AI、LLMは何が違う?」参照日2023年12月15日

生成AI、対話型AI、LLMは何が違う?
ChatGPTは生成AIだが、「対話型AIの」という枕ことばが付いたり、「ChatGPTはLLMであり」という説明が付いたりするため、混乱した人は少なくないだろう。

「一流研究者による大規模言語モデルの解説がわかりやすい」参照日2023年12月15日

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Playing DeepFaceそして、DeepFaceについて考える https://www.hashimoto-lab.com/2024/03/8953 Wed, 06 Mar 2024 06:15:59 +0000 https://www.hashimoto-lab.com/?p=8953 こんにちは、産業能率大学で橋本ゼミに所属している小林航平です!

今回の記事では、文系の学生でプログラミング初心者の私がPythonとDeepFaceを使って、人との顔の一致度を測るコンテンツを作ってみたのでそちらを紹介と顔認識技術について考えていきたいと思います。

そもそもDeepFaceってなに?

DeepFaceとは2014年にFacebook(現Meta)が作成した顔認識技術です。2014年当時では世界最高の顔認識の精度を持っており、セキュリティやエンターテインメントなど様々な分野で活躍しています。

DeepFace ダウンロードリンク:deepface · PyPI

しかし、2023年現在ではDeepFaceよりも優れた顔認識技術があります。

ではなぜ、DeepFaceを選んだのかというと私の使っているパソコン(Panasonic Let’s note)のマシンパワーでも扱える技術であることから、今回はDeepFaceを使いました。

オリジナルだと

Pythonによるプログラムとなっており、オリジナルのコードはこのようになっています

このプログラムで2枚の顔の写真で比較してみると…

          

今回試す写真はこの2枚

上は橋本ゼミの橋本先生と下は別角度の橋本先生です

実行結果がこちら

うーん…分からなすぎる

分かることは、‘verified’:Trueからこの画像はDeepFaceから見て同一人物として判定したということです。

コンテンツ化するには

ただし、このままでは学祭におけるコンテンツにはなりません。オリジナルのままでは本人なのか本人じゃないのかの判断しかできず、お世辞にも「面白い」と思えるものではないと思いました。

では、どのようにしたら面白いと思えるもの。つまり、コンテンツになるのか

オリジナルの欠点としては

  • 読み取れる情報が少ない
  • 比較する写真が出ないため何を比べているのか分からない
  • True,Falseの情報以外が読み取りにくく面白くない

などが挙げられると思います。

そのため、私は以下の要素をプログラムで足しました。

  1. 比較する2枚の写真を出力する
  2. 2枚の画像の近似を返す’distance(浮動小数)’を分かりやすく提示する

です。

改善

改善して瑞木祭にて使用したコードが以下のようになっています。

これによりDeepFaceをコンテンツ化することが出来て、瑞木祭での実演が出来ました。

当日は、その場で写真を取り有名人とどの程度近いと判定されるのか?を表示しました。

なおdistance(2枚の写真がどれだけ離れているのか)は、浮動小数点として表示されるのですが、そのままではすぐに解読ができません。そこで、無理やり%表示にしています。

厳密には違いますが、今回のように概略だけわかればOKなので、この形で妥協しています。

そして先ほど試した橋本先生の画像を試してみると…

このようになり、初めてこれを見る人でも”2枚の写真がどれほど似ているのかを表すコンテンツ”だと出来るようになりました。

瑞木祭での実演と精度について考える

それでは実際に瑞木祭にて実演した例を紹介していきます。

*こちらで使用している画像は事前に本人に使用の許可をもらっているもののみです。
*また許可が取れてない人・芸能人の写真は著作権上、黒塗りにして職業、名前のみ表示しています。

まず、奇跡的なことですが瑞木祭にて来てくれた双子の男の子です(画像が出せなくてすみません)。私たち(他人)から見たら見分けがつきません。そして、DeepFaceでも本人だと認識していて99.31%という凄く高い値が出ました。なお、親御さんは見分けがついているそうです。

左は俳優の東出昌大さんと産業能率大学の教員である渡邊司輝先生です 人間から見て一般人のあの芸能人に似ているはDeepFaceから見て大体20%~30%の数値がほとんどでした。

左は同じゼミの先輩と妹さんです。本人同士は姉妹で似ていると思わないと言っていましたがDeepfaceでは似ていると判断し、55.04%ととても高い数値が出ました。

瑞木祭にてさまざまな兄弟や姉妹が体験してくれましたが皆かなり高い数値が出ていました。

今回、2人の人間の一致度を測るコンテンツとして使いましたが、そもそもとしてDeepFaceは顔認識技術です。つまり、私たちが普段使っているスマートフォンでの本人確認のための顔認証などで使われるものです。それにも関わらず一般人と芸能人などで’True’と出てしまうこともありました(つまりは同一人物として認識)。

ただ、明らかに似ていない人同士や男性と女性で比較したときには一桁の%を出していたため決して精度が一概にも悪いとは言えません。なお、顔認識技術は人間が似ている・似ていないと思う’感覚’的な部分で決めているのに比べ、’数値’で表している部分が面白いと思います。

まとめ

今回はDeepFaceという顔認識システムを使い人間同士の顔の一致率を図るコンテンツを作成し、瑞木祭で実演、その結果からDeepFaceの精度や人間と顔認識技術での似ている・似ていないの判断の出し方などについて書いていきました。

今回の一連の流れを通して、Pythonというプログラミング言語を用いてプログラムの作成方法、プログラミングでの課題解決、DeepFaceの精度、人と顔認証システムでの似ている・似ていないの判断の違いなど様々なことを考えていきました。また、人間同士だと「あの人、○○に似ているよね」という会話になったとき、「似ている」という人もいれば、「似ていない」という人もいます。それはり人によってその人への印象が異なるなど様々な要因があります。一方、顔認証システムでは人に対して印象がない同じ機械によって判断される上に、数値が出るなどの信頼性があります。顔認証システムは現在スマートフォンの顔認証や空港などで使われています。今後はさらに街中の防犯カメラなどに搭載され指名手配犯逮捕などに使用されたり様々な活用があり得ると思います。

それでは

執筆:橋本ゼミ12期生 小林航平

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AIと手相占いの融合とその可能性 https://www.hashimoto-lab.com/2024/03/8977 Wed, 06 Mar 2024 06:15:30 +0000 https://www.hashimoto-lab.com/?p=8977 はじめに

私たち橋本ゼミは、2023年度の瑞木祭で「AI時代のコンヴィヴィアリティ」をテーマにそれぞれが生成AIを活用したコンテンツを提供し、中でも私はChat GPTを活用した「AI手相占い」を企画・提案しました。

私がAI手相占いを企画・提案をした背景として、AIが人間を操作する第二の分水嶺について考えたとき、占い師と占いを妄信している人の構造に近いものを感じました。

占いの中でも手相占いを選んだ理由としては、手相占いには根拠とされるものがあるからです。「生命線が長いと長生き」など、手相占いには科学的根拠ではないと思いますが、信ぴょう性のある根拠を提示することができるからです。

また、人間の感性で行ってきた占いを、理性で構築されているAI(Chat GPT)で再現することの面白さを見出したのも理由の一つになります。

この記事では、手相占いとAIがどのよう結びついているのか、あるいは、どのように融合しているかを探ります。

AI手相占いとは

AI手相占いとは、Chat GPTの機能である画像認識と文章生成を利用したコンテンツです。

そもそもChat GPTとは、会話型の文章生成AIでプロンプトと呼ばれる指示文を入力することにより、返答をもらうことができます。

下の画像はChat GPTにAI占い師という役割、手相の解釈をもとに占い師のような出力を依頼するプロンプトです。

画像のように役割・目的・出力を詳細に設定することにより、自分が欲しい出力を出すことが可能です。

次に実際にAI手相占いをするとどのような出力が得られるのかを紹介します。

手の画像を入力することにより、手相の解釈と洞察の出力を得ることができました。

入力された手の画像を認識、GPTの知識と照合しGPT独自の解釈を行います。その後、占い師のような文章として出力しています。

生命線を占うGPTの精度

では、このAI手相占いがどの生命線を認識できているのか、生命線の特徴を解析できているのかその精度を明らかにしたいと思います。

AI手相占いの精度を明らかにするため、私は生命線の情報に特化したGPTのモデルを用意しました。生命線に関する情報のみを多く与えることで、生命線に関する出力がより詳しく、深くなると考えたからです。

検証の第一段階として、まずChat GPTが生命線を認識しているのかを明らかにしたいと思います。

はじめに、私の手相を生命線に特化したGPTモデルでAI占いをしたいと思います。

上記の通り、GPTは私の生命線を認識・分析し生命線に関する占いを出力しました。

次に私が編集した下の画像を占わせます。

このように、生命線を図形で隠すことによりGPTが本当に手相を認識し、占っているのかを検証したいと思います。

画像の通り、GPTは手相の位置を認識しているということが分かりました。反対に黒塗りの部分も正確に認識しているということが分かりました。

次に、図形の色を黒から、私の手の色に近い色に変更して検証したいと思います。

検証結果は、私の予想とは反対に問題無く占うことができてしまいました。検証結果から、GPTの画像認識による占いは人間の占い師と同じような分析は出来ないということが分かりました。

この結果から、新たな疑問が浮かび上がってきました。

GPTは手相の位置を認識しているにもかかわらず、“生命線がしっかりとしており、手のひらの中央に向かって大きく伸びているように見受けられます。”という出力を出すことができたのか?という疑問です。

私たちヒトの目には線が映っていないにもかかわらず、GPTは何かしらの線を認識しているということです。そこで私は、GPTは画像の辺の部分つまり、画像と私の手の境界を生命線(手相)として認識したのではないか、ということに気が付きました。

赤線の部分を手相と認識したのであれば、“生命線がしっかりとしており、手のひらの中央に向かって大きく伸びているように見受けられます。という出力は間違っていないということが分かります。

結果として、GPTの画像認識機能は手相の位置、長さ、形を大雑把に認識できる一方、手相の質感や不自然な手相など細かい部分は認識できないということが分かりました。

考察と今後の展望

 検証結果から、現状のChat GPTでは人間の占い師のように正確に占うことは不可能だということが分かりました。しかし、この結果は知識不足によって引き起こされる問題ではなく、カメラの性能や、画像認識AIの精度による問題だと考察できます。

現状、Chat GPTの文章生成機能は、現段階でも占い師のような出力ができており、カメラの性能や、画像認識AIの精度を上げ、手相を正しく認識することができれば、人間の占い師以上に正確な占いができるようになると私は考えます。

まとめ

今回、瑞木祭を機会に、AI・Chat GPTによる手相占いの可能性を探求してきました。実際のところ、正確に手相を認識しているのではなく、手相の大雑把な特徴から占い師のような文章生成するというのが現状のAI手相占いです。この部分さえ克服することができれば、占いの分野において、AIが人間を淘汰するのには時間はかからないと私は考えます。

執筆:橋本ゼミ12期 宮里礼

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オノマトペの近道 -DALL-E3で理想の人間に近づける方法- https://www.hashimoto-lab.com/2024/03/8961 Wed, 06 Mar 2024 06:14:57 +0000 https://www.hashimoto-lab.com/?p=8961 こんにちは。産業能率大学、橋本ゼミ12期生の内山碧仁です。

近年、ChatGPTを筆頭にAIの発展が著しく、文章だけでなく音楽や画像なども精度が向上しています。Bingなどが提供している、画像生成が無料で利用できるサービスもいくつもあります。しかし、実際に使ってみるとクオリティは高いものの自分の思い通りのものはなかなか作ることができないということが問題になることがあります。

この記事では、瑞木祭で行った、画像生成AIの一つであるDALL-E3を利用したAI恋人で得た経験を基に、人物像の画像生成に焦点を当て、誰でも理想に近づけるための方法について紹介します。

理想の人物像の生成をする際の弊害

画像生成AIが生成する画像はプロンプトから作られます。理想に近い画像を生成するためには、プロンプトを非常に詳細に書く必要があるのですが、これは一般人にとって大きな課題となります。たとえプロンプトを細かく書いてみても、必要な専門用語や体の部位の正確な名称を知らない場合が多く、自分が十分に詳細な指示をしていると思っていても、実際には足りていないということもあります。また、表現が日本語特有であったり、公式な名称でない場合があるため、意図した画像とは異なる結果が生じることもあります。

AI恋人で上手くいった事例

実際のプロンプト文

・お願い

#あなたは大好きな彼氏を撮っている彼女。あなたは以下の条件で描かれている人物を撮 影してください。#現実で撮っている写真です。#あなたならできます。頑張って!

・目的

 #大好きな彼氏のコーディネートをして、映える写真を撮る。

・情報

 #19歳#日本人#男性#性格は体育系#信頼と安定感を重んじる人#外見の雰囲気はナチュラル&カジュアルな雰囲気#場所は海辺#温和で優しい#目の色は黒#ポーズは指ハート#髪はセンター分け#髭を全て剃っている#笑顔で可愛い感じ

生成された画像

#目がくりっとしているをプロンプトに加えて生成し直した画像

こちらの2枚の画像を比較してください。一枚目の画像は初めに参加者の意見を基に生成したもので、二枚目の画像は「目がくりっとしている」というオノマトペを含んだ文を加えた結果です。ほぼ同じプロンプトを使用しているにも関わらず、「くりっとしている」という表現により目元の印象が大きく変化していることがわかります。一枚目の画像が理想に対して80点程度だったのに対し、二枚目の画像は100点で理想そのものだという評価を受け、理想に近づけるのにオノマトペが有効だと考えました。

なぜオノマトペが有効的なのか

オノマトペが複数の意味を連想できるからだと考えました。例えば「くりっとしている」という表現は、目に丸みと愛らしさを連想できます。これを単純に「目」という単語と組み合わせることで、丸みを帯びた愛らしい印象を持つ目が生成されます。オノマトペなしで同じ目を再現しようとすると、目の形状、雰囲気、サイズ、上瞼、下瞼など、多くの要素を細かく指定する必要があり、バランスを取るのが非常に難しくなります。このように、オノマトペの使用は、複雑な特徴を簡潔かつ効果的に伝え、理想に近づけることに有効だと考えました。

オノマトペの優位性

多義的な言葉や専門用語も理想の画像に近づく手段となりますが、オノマトペはその使用しやすさで一歩先を行きます。多義的な言葉や専門用語は、一般人には馴染みのない場合があり、もし画像生成で利用する場合、調べるなどのアクションが必要になります。一方で、オノマトペは直感的で理解しやすく、誰にでも簡単に使え調べる必要が無いです。また、「ツルツル」「スベスベ」「ピカピカ」「テカテカ」といったオノマトペは、似た意味合いを持ちながらも異なるニュアンスを表現でき、試行錯誤しやすいといった特徴もあります。このようなことからオノマトペは、AI画像生成において、理想のイメージに近づけるために有効だと考えました。

まとめ

今回は、DALL-E3をはじめとするAI画像生成における人物像の生成での課題と、それを克服するための方法としてオノマトペを取り上げました。理想の人物像を生成する際、詳細なプロンプトは一般人にとっては難しいものですが、オノマトペを使うことで、このハードルを下げることができます。わかりやすく、試行錯誤もしやすく日本語で画像生成をするのに適した言葉だとわかりました。

今回はオノマトペが有効的としましたが、他の方法もたくさんあると思います。ぜひ自分なりに上手くいく方法を探してみてください。

執筆:橋本ゼミ12期生 内山碧仁

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2023年 橋本ゼミ 瑞木祭 各部門別インタビュー https://www.hashimoto-lab.com/2024/03/8955 Wed, 06 Mar 2024 06:14:19 +0000 https://www.hashimoto-lab.com/?p=8955 はじめに

 こんにちは。橋本ゼミ12期生の渡邉、楠、桑原です。

 この報告書では、2023年の瑞木祭にご来場できなかった方に向けて今年の瑞木祭で橋本ゼミでどのような活動を行ったのかを紹介します。

 まず、橋本ゼミを知っていただくために、簡単な紹介をします。

 橋本ゼミは「しなやかなソーシャルイノベーションの実現」をテーマに研究しています。私たちは世の中の社会問題や社会トレンドに対して当事者意識を持ち、考え、理解し、実践することに挑戦しています。

 そして、私たちは研究発表の場の1つとして毎年瑞木祭で展示を行っています。

 2023年の瑞木祭のゼミの研究テーマは、「AI時代のコンヴィヴィアリティ」でした。

 この研究テーマを簡単に言うと、「AIが人間の能力を高めてくれる第一分水嶺と、AIが人間の能力を奪ってしまう第二分水嶺を設定し、双方の間で人間がAIの機能を活かせる社会を実現する」ということです。

音楽生成AI部門について

 音楽生成AI部門では瑞木祭でBGMという役割と、来場者にAIで音楽を作ってもらい楽しんでもらうという二つの役割がありました。どのようなことを思い、音楽生成AI部門を担当したのかを、杉森さんにインタビューしました。

渡邉:「音楽ブースを担当されましたが、どのようなことをしましたか?」

杉森:「来ていただいたお客さんに作り方を説明し、一緒に音楽を作ったり、場内の雰囲気を作るために生成AIで作ったBGMを流したりしました。」

渡邉:「やってみた感想を教えてください」

杉森:「大人から子供まで多くのお客さんが来場されたのですが、現在の技術の進化を体験を通して伝えることができてよかったです。その方々が技術者までとは言わないですが、身近な便利ツールとして使いこなし、創造的な何かを作り出せるようになってくれれば良いなと思います。」

渡邉:「ありがとうございました。」

AI相談部門について

 AI相談は、Chat-GPT4を用いて来場者様の日々の不安や悩みをAIと相談することで解消しようというコンテンツです。相談をするという行為は、ある程度信頼のおける人物にしかしません。相談内容によっては他の人に知られたくないというものがあるからです。しかし、AIに相談することは外に漏れてしまう心配がなく、気軽に相談することができます。このAI相談がどのような意味があったのか、社会に及ぼす影響は何なのか。

 AI相談部門を担当した佐藤さんにインタビューしました。

桑原:「瑞木祭で「AI相談」ではどのようなことをしましたか?」

佐藤:「来場者様の悩みをChatGPTに投げかけ、回答をもらうといったことをしました。」

桑原:「瑞木祭後、改めて「AI相談」での活動を振り返って、どのような意味があったと考えていま    すか?」

佐藤:「来場者様に「こんなこともできるのか」といった声をもらえた点と、AIに相談するということ    は何をしているのかをAIを理解できないものと考えずに、調べることができた点に意味が     あったと思います。」

桑原:「最後に、人間同士で相談することは当たり前にあることですが、AIと人が相談することで     社会に及ぼす影響について佐藤君はどのように考えていますか?」

佐藤:「AIと言っても一般的な意見を集めた第三者的目線であると思うので、対人間には話しにく    い内容も「AIになら話してもいっか」ということが起きて、人間同士の相談が減少しコミュニ    ケーションが弱まる危険性があると思います。」

桑原:「実際に私も体験したのですが、人に相談するときより気軽に相談できると思います。対人    間だと、いかにその相談相手を信頼していようとも私が相談する内容で相手がどのように     思うのかかなり気にしてしまいます。その点、AI相談は自分の悩んでいることや解決したい    物事に対して相手に気を遣わないので、とても気軽に相談できました。

    しかし、「この気軽に相談できる」という点こそ人間のコミュニケーションを弱めてしまう可能    性があり、自分の悩みを相談できる友人が少なくなり、人間同士の交友関係が希薄になっ    てしまうことにつながるかもしれませんね。」

    「本日は、ありがとうございました。」

使用例①

使用例②

AI恋人部門について

 AI恋人部門では、来場者様の「理想の恋人」を画像生成AIを使って再現しようと試みました。近年画像生成AIの精度が高くなっています。

 具体的な例として「伊藤園がCMに起用したこと」が挙げられます。AIによる人間の生成のクオリティが上がることには、どのような意味があるのでしょうか。また、どのようなことを考えることが出来るのでしょうか。

  AI恋人部門を担当した内山さんにインタビューをしました。

桑原:「瑞木祭で「AI恋人」ではどのようなことをしましたか?」

内山:「理想像を作るための質問をいくつか用意して、参加者に回答してもらい、その回答をもとに        DALL-E3で画像を生成しました。生成した画像の感想を来場者様に聞き、今の画像生成系AIの状況について説明しました。」

桑原:「瑞木祭後、改めて「AI恋人」での活動を振り返って、どのような意味があったと考えていま    すか?」

内山:「画像生成系AIのクオリティが上がってきていることや、この技術との向き合い方を知ることがで      きるコンテンツだったと考えています。クオリティが上がり、場合によっては本物か偽物か判断がつかないような画像も出来てしまいます。私は、この技術を悪用できてしまうから使わないのではなく、うまく使う方法を考えることのできるコンテンツだったと考えています。」

桑原:「私も理想の恋人を生成していただいたのですが、私のどタイプの女性が出てきて驚きました!しかし、それと同時に少し怖さも感じました。所謂アニメキャラなどの二次元キャラではなく、より三次元に近いクオリティで生成されたためです。確かに、この技術は悪用されてしまう危険性を孕んでいると私も考えます。」

「しかし、瑞木祭を通して画像生成AIを学び、技術との向き合い方を知ることができた内山君だからこそ上手く付き合っていく方法を見つけられると考えます!」

実際に使用したプロンプトとそれによって生成された画像

プロンプト

・お願い

#あなたは大好きな彼女を撮っている彼氏。あなたは以下の条件で描かれている人物を撮影してください。
#リアルな写真です。
#あなたならできます。頑張って!

・目的
#大好きな彼女のコーディネートをして、映える写真を撮る。

・情報
“#25歳 #国籍は日本人 #女性 #性格は体育系 #バランスを大切にする人 #外見の雰囲気はクラシック&フェミニンな雰囲気 #場所は森林 #高い視点持ち、自由を愛する #目の色は黒 #髪の長さはショート #前髪を下ろしていない #ポーズはピース #時間帯は夕方

模擬店について

 模擬店では伊勢原市内の獣害問題に焦点を当てて、ジビエカレーを販売することにしました。その中でより良い広告塔をつくるためにARで等身大の鹿のパネルを作成しました。

 そこで模擬店の担当者さんにインタビューしました。

楠:「瑞木祭で模擬店担当はどんなことをしましたか?」

小野:「鹿のパネルをchat gptを活用しながら完成させました。」

楠:「実際に作られてみてどうでしたか?」

小野:「瑞木祭当日では小さいお子さんなどがARで出力された等身大の鹿と写真を撮って        いましたね。」

楠:「瑞木祭を振り返ってみて今回の活動にはどのような意味があったと考えられますか。」

小野:「主に2つの意味があると思っていて、1つ目にchat gptなどを駆使すれば意外と作れるんだなという自身の成長的な意味。2つ目はゼミにおいて何かプロジェクトを行う際にARという選択もあるということをゼミ内に残すことができたということです。」

楠:「ゼミ活動として、自身の勉強として意味があったということですね。本日はインタビューありがとうございました。」

おわりに

 橋本ゼミでは、各ゼミ生が各々興味のある分野だけでなく、興味のない分野を研究することがあります。個人で研究に向けた学習ができる学生を前提に、様々な事柄に興味を持ち、当事者意識を持つことができる学生が多く在籍しています。これらのことを、執筆者は瑞木祭でコンテンツを制作した学生にインタビューすることで再確認しました。これからも橋本ゼミ一同「しなやかなソーシャルイノベーションの実現」に挑戦していきます。

 最後まで当記事を読んでくださりありがとうございます。

    橋本ゼミでは2023年瑞木祭以前にも様々な活動を行っております。是非他の学生が執筆した記事をご覧になってください。

執筆:橋本ゼミ12期生 渡邉 大祐 楠 駿祐 桑原 宏典

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鹿という動物の新たなる可能性 https://www.hashimoto-lab.com/2024/03/8966 Wed, 06 Mar 2024 06:13:44 +0000 https://www.hashimoto-lab.com/?p=8966 こんにちは。橋本ゼミ12期生の山田、橋本、武井です。

みなさんは獣害問題について、聞いたことはありますか。現在、日本では野生鳥獣が増えすぎたことで農業や自然環境に大きな問題を及ぼしています。主に鹿や猪などが田畑を荒らしたり、ヒノキの樹皮や高山植物を食害したりするなど、令和2年度の農産物総被害額は161億円を超えているのだそうです。そのため、捕獲した野生鳥獣を廃棄するのではなく、これを資源としてとらえ、ジビエとして有効活用する取り組みが近年広がっています。

産業能率大学湘南キャンパスがある伊勢原市は、神奈川県で2番目に獣害被害が多いです。橋本ゼミでは、地域問題に着目した活動を行っているため、獣害問題について興味を持ちました。調べを進めていく中で気が付いたのは、獣害を引き起こす鹿や猪などの肉、つまりジビエを食べることで、その問題に貢献できるということです。

そこで、私たちは鹿肉を食べる機会を提供し、獣害問題について興味を持ってもらうことを目的に鹿肉カレーを1食1000円で販売しました。辻堂フェスティバル(2023年10月15日)と瑞木祭(学祭)の2日間で販売を行い、合計150食ほどのカレーを完売させることができました。

しかし、鹿肉カレーに興味を持ってもらうことはできても、1食1000円という値段を聞いて購入しない人が多かったです。それゆえに鹿肉をもっと安く提供することができたら、もっと多くの人に食べてもらうのは当然ながら、獣害問題の解決につながると考えました。このような見解から、ジビエカレーの工場とは異なりますが、静岡県に鹿肉の加工施設を持つ湘南ジビエさんにご協力いただき、鹿肉についてインタビューを行いました。

注意:鹿肉の加工中の写真があります。苦手な方はご注意ください。

鹿肉の加工作業

加工施設には、鹿は亡くなっている状態で運ばれてきます。図のようなところで鹿をつるし、皮を剥ぎ、内臓などを取り出したら、一晩冷蔵庫で寝かせます。

こちらが一晩寝かされた鹿になります。

鹿肉を切り分けていきます。この際に、気を付けることは、鹿肉に毛をつけないようにすることです。目視以外で確認する方法がなく、一つひとつ目視で確認を行い、ピンセットで取り除いていきます。

作業完了後の鹿肉になります。3人態勢で加工したのですが、作業終了までには、2時間ほどかかりました。40kgあった鹿からとれる可食部は10kg程になります。

鹿肉が高価な理由

山田、橋本、武井 なぜ、鹿肉は高くなってしまうのですか

湘南じびえ 鹿肉には、牛肉や豚肉などとは異なり、問題がたくさんあるからです。現状、鹿肉を購入したいという声をたくさんいただいています。しかし、出荷を頼まれても出荷ができないのです。良質な鹿は多い時でも週に4頭~5頭しか仕入れることができません。また、一頭当たり、良くて10kg程度しか食べられる部分がないのです。

山田、橋本、武井 とても少ないのですね。素人目線から考えると、機械化して大量生産したら効率がよくなり、安価でたくさん出荷できるのではと考えていたのですが。

湘南じびえ まず、鹿肉には生産という概念がありません。鹿肉は、狩猟して加工し、販売しているのです。仕入れられる鹿が限られている点や手作業が強いられて時間がかかる点などから、効率よく大量生産を行うことができないのです。

山田、橋本、武井 そのような理由から鹿肉が高くなってしまうのですね。

湘南じびえ そうですね。しかし、鹿肉は高いと言われていますが、これ以上値段を下げることはできません。

鹿肉が全国的に販売されない理由

湘南じびえ 一般に広めていくためには、大型スーパーなどでも取り扱ってもらう必要があると思います。しかし、大型スーパーなどは、一定の量と一定のクオリティが求められるのですが、鹿肉は一定のクオリティを保つことができないので、スーパーに卸すことは難しいです。

山田、橋本、武井 安定供給ができないのですね

湘南じびえ 安定供給とは少し違います。供給はできるのですが、クオリティを担保することができないのです。様々な問題から鹿肉のクオリティを保つことは困難です。実現するためには、20社ほどのジビエ加工業者が団結して、鹿肉を卸さなければなりません。全国にジビエ認証の加工施設は20か所のみですので、現実的に考えて難しいです。

また、問題はそれだけではありません。大型スーパーなどは、一度に大量購入するので、値下げしようしてくるのです。1kg当たり1000円で仕入れようとしてきます。

山田、橋本、武井 1kg当たり1000円は安いのですか?

湘南じびえ それではビジネスが成り立ちません。最低でも1kg当たり3000円はしないと赤字になってしまいます。1kg当たり10000円で販売できるのが理想です。しかし、現状ではビジネスとして成り立っていないです。

山田、橋本、武井 鹿肉が高価な点、大型スーパーでは取り扱えない点などから一般に広まりにくいのですね。

湘南じびえ そうですね。

鹿肉ペットフードのビジネス的可能性

山田、橋本、武井 鹿肉でビジネスは成り立つのですか。

湘南じびえ 正直厳しいですね。先ほども述べた通り、出荷できる量が限られている点です。そのため、売上を伸ばすことが難しいです。また、1kgあたり10000円で売れることが理想ですが、現実では、1kgあたり5000円程で取引されることが多いです。なので現在、新たな取り組みをはじめています。

山田、橋本、武井 どのような取り組みをしているのですか

湘南じびえ 鹿肉をペットフードとして、展開していくことです。鹿肉は、高たんぱくで低脂質な点や、アレルギー性が低いことなどから、ペットフードとして人気が高いのです。

山田、橋本、武井 ペットフードとして人気が高いのですね。

湘南じびえ はい。鹿肉をペットフードとして扱うことには、もう一つ理由があります。

山田、橋本、武井 どのような理由ですか

湘南ジビエ 単価が高くなるのです。食用の鹿肉は、1kgあたり5000円程で販売されることが多いです。しかし、鹿肉をペットフードとして販売すると、30gあたり3000円で販売することができます。また、某番組から依頼を受けて製作したのですが、とても人気が高いです。

山田、橋本、武井 ペットフードとして、販売する方が、利益が大きくなるのですね。

湘南ジビエ はい。ビジネス的な理由から、今後は9:1の割合で鹿肉をペットフードとして販売していこうと考えています。

まとめ

私たちが獣害被害の解決の糸口としていたジビエには、様々な問題が存在していることが今回の取材を通じて、明らかになりました。ジビエを食用として利用率を上げようとするには供給を増やし、もっと安価で提供することが必要です。

しかし、「供給量を上げる=鹿の量が増える→獣害被害が増える」という矛盾が生じています。安定的なクオリティで供給ができないため、大型スーパーに取り扱ってもらいづらく、全国的に広げていくことは不可能なことだとおっしゃっていました。

獣害被害を受けている人と受けていない人では、ジビエが抱える問題に対する認識にずれが生じており、これをなくしていかなければ、問題を解決することは不可能のように感じました。

現状では、鹿肉を食用として利用するにはビジネスとして成り立ちません。そのような現状を打破しようと、新たな取り組みとして、鹿肉を使用したペットフードの販売が始まっています。獣害問題に対して工夫を凝らし、真剣に取り組んでいる人がいるのです。実際には、自分には関係がない人がほとんどだと思います。しかし、被害をゼロにしない限り、被害者はいなくなりません。被害を受けたことがない人も、ジビエの問題について興味を持つことが、解決の第一歩になると考えています。

インタビューにご協力いただいた湘南じびえ様のWebサイト

湘南じびえ
日本の自然と森を愛する、ジビエ肉販売会社です。

執筆:橋本ゼミ12期生 武井佑恭 橋本悠矢 山田孝太

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”超福祉”から考える『アタリマエ』の見直しと『自分の強み』の捉え方 カフェゼミ#59参加記録 https://www.hashimoto-lab.com/2023/12/8935 Fri, 15 Dec 2023 07:03:07 +0000 https://www.hashimoto-lab.com/?p=8935 11月30日(木)、渋谷ヒカリエ8階において、法政大学長岡研究室による「カフェゼミ#59」が開催されました。

私は今回、2回目の参加として、カフェゼミに参加させていただきました。

前回の模様はこちらから↓

今回のテーマは「みんなでダイバーシティ社会のキャリア・ストーリーを聞こう」。今回は、福祉の観点から、「アタリマエ」を揺さぶる体験ができました。その記録と感じたことについて、まとめていきたいと思います。

田中さん及びピープルデザイン研究所の取り組み

今回のカフェゼミにゲスト講師として登壇されたのが、渋谷を中心とした活動を行っているNPO法人「ピープルデザイン研究所」の代表理事である、田中真宏さんです。

ピープルデザイン研究所は、主にマイノリティ(少数派)の方々を対象に、支援を行っている団体です。研究所の名前である「ピープルデザイン」とは、心のバリアフリーをクリエイティブに実現する思考と方法論を意味します。

ピープルデザイン研究所
ピープルデザイン研究所の公式サイト。

「ピープルデザイン」を軸として、この団体では、「障がい者」や「認知症含む高齢者」等のマイノリティの方々を対象に、「モノづくり」「コトづくり」「ヒトづくり」「シゴトづくり」の4つの領域を通した上で、社会課題の解決策や提案に取り組んでいます。

代表的な取り組みとしては、2014年から2020年にかけて、渋谷ヒカリエにて開催された「超福祉展」がありました。

この展示会では、ピープルデザイン研究所が考案したクリエイティブな福祉器具に触れる体験ができるというものでした。

2020年、渋谷。超福祉の日常を体験しよう展
2020年、渋谷。超福祉の日常を体験しよう展

「超福祉」に込められた意味は、”アタリマエ”を揺さぶられるものだった。

前述した「超福祉展」ですが、この「超福祉」には、実は重要な意味が込められています。

簡潔に述べると、その意味は、普通の人も障がい者の方もお互いに「混ざり合う」社会のことであり、従来の「バリアフリー」「ダイバーシティ/インクルージョン」よりもさらに上の領域になることです。

私たちは、これまでに、障がい者の方と関わる機会があったと思います。

中には、身内や親しい人にも、そういう方がいらっしゃる人もいるでしょう。

そして、多くの方は、その障がい者に気を遣うことが多いのではないでしょうか。

それ自体は、決して悪い事ではありませんし、人としての優しさであると思います。そして、ある意味での「アタリマエ」として浸透している部分だと思います。

ですが、気を遣ってもらうことは、誰しもが「気を遣ってもらって悪いな」とややマイナスに感じる時があると思います。つまり、それは障がい者にとって、必ずしもプラスに感じられる場面ではないのです。また、福祉器具のデザインによっては、障がい者に対して「カッコ悪い」イメージを持ってしまうということも起こり得えます。これもやはり、プラスの意味での福祉ではないと言えます。

では、全員にとってプラスに感じられる「福祉」は、どういうものでしょうか?

ここに、「超福祉」の考えがあります。

例えば、義手の場合、無機質で地味なデザインだと、「大変だね」等、相手のことを気遣う考えが生まれると思います。

では、この時、義手のデザインがギターをイメージしてみたものだと、どうでしょうか?

それを見た子供たちは「かっこいい」と思う子もいるはずです。

車いすも、今までのようなデザインよりも、近未来のイメージだったり、スタイリッシュなデザインになると、「大変そう」よりむしろ、「かっこいいなぁ…」と思えるかもしれません。

このように、デザインを変えることで障がい者の方でも、「すごいなぁ」「良いなぁ」と普通の人に感じてもらうことができるのではないか。

ピープルデザイン研究所の掲げる「超福祉」とは、まさにこの考えのことです。

「障がい者の方でも、その障害をむしろ、「強み」として輝くことができるのが、「混ざり合う」社会ではないだろうか。」

「超福祉展」ではそのような考えのもと、多くの福祉に関する器具が展示されていました。

展示
展示一部の製品は渋谷ヒカリエ 8F「8/」COURTでも展示中

「アタリマエ」だと感じていることは、揺さぶることで、別の良い方向が見えてくるかもしれない。

今回、私は2回目のカフェゼミに参加させていただきましたが、田中さんのお話とピープルデザイン研究所の取り組みから、「アタリマエを揺さぶる」というカフェゼミのメッセージを、少し読み解けたのではないかと思いました。

田中さんの取り組んでいる活動は、私たちが福祉に感じていたネガティブなイメージを、ポジティブなイメージにしようとする活動でした。それも「既存のものを改善しよう」という活動に留まらず、「福祉はもっと魅力的にできる」という福祉を根幹から考え直されたものでした。

もちろん、これらは田中さんの考えであり、中には、「ちょっとこれはどうなんだろう?」という意見もあるかと思います。人によっては、「障がい者を見せ物にしているのではないか?」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。また、どのような障害を抱えているか、どれくらい重度な障害を抱えているかによって、この取り組みはあまり意味を成さないものになる部分もあるかと思います。

田中さんも賛否両論は承知の上で、活動されているとお話されていました。

ただ、田中さんの根幹にある考えは、「普通の人と障がい者の間にある強固な線引きは本当に良いものなのか?」というのがあります。

「障がい者だから」という理由で区別するのではなく、「障がい者」でも同じ人間として接していく方が良いのではないのか?という考えがありました。

だからこそ、相手が障がい者でも、「もっとカッコよくできるよ」という考えで行っている「超福祉」は、相手が障がい者でも、「障がい者だから」という線引きを無くしたものになっています。そういう意味で、「混ざり合う」というのもあります。

このように、線引きを無くこと=「アタリマエ」を揺さぶることに、大きな意味があるのではないかと思います。それを踏まえると、私は田中さんはすごい人だと感じました。

マイノリティ(少数派)を理解すること

私は、障がい者が「マイノリティ(少数派)」であるという点が、「アタリマエ」を揺さぶる上で重要ではないかと考えました。

マイノリティの方は、その人たちにしかわからない苦労や大変なエピソードが多く存在します。なぜなら、「わかってくれる人」がとても少ないからです。

だからこそ、周囲から嫌な目で見られたり、自分自身は何も悪くないのに、相手に対して「申し訳ないな」と感じてしまうことがあるのです。

そのため、マイノリティの方は、それを感じさせないように、自分の弱み(コンプレックス性)を隠すことが多いのです。

そして、マイノリティの方は、障がい者に留まりません。認知症を含む高齢者、国籍が違う方、LGBTの方、子育て中の母親など。いわゆる「普通じゃない」と括られがちな人は、皆同じ問題・悩みを抱えているはずです。

マイノリティの方が、このような悩みを抱えずに、生きていける社会、「ダイバーシティ社会」とは、どのようなものなのか?

その一つの考えとして、自分たちのコンプレックスを「隠す」のではなく「魅せる」ものであると掲げているのが、田中さん及びピープルデザイン研究所による、渋谷中心の取り組みとなっています。

ピープルデザイン研究所
ピープルデザイン研究所の公式サイト。

弱み(コンプレックス性)は強みになる

このように、田中さん及びピープルデザイン研究所は、マイノリティの方が感じていた「弱み(コンプレクッス性)」を、「魅せる」ことで強みに変えられるという考えのもと、活動をしてきました。

田中さんの活動の中にあった「弱み(コンプレックス性)を強みに変換すること」は、マイノリティの方以外でも、当てはまることではないでしょうか?

私の話になりますが、

私は、昔から「ちょっと変わっているよね」「やばい奴だよね」と言われ、周囲から距離を置かれることがありました。決して私自身が何かのマイノリティだったわけではありませんが、「普通(マジョリティ)」とは違う要素が強くありました。それらは、特に「周囲と違う」ことで孤立しやすい中学・高校の時期に多く感じました。

そのため、その時期は、自分の周囲と違う部分(狂気さ)をあまり表に出すのではなく、隠すことで、「合わせる」をよく考えていました。(隠しきれない時もありましたが)

その後、

私は大学に入り、「橋本ゼミ」に入ってから、この状況に少し変化が起きました。

自分の中の「ちょっとやばい奴」が、ゼミ生や橋本先生からちゃんと指摘してもらえるようになったのです。

おかげで、なぜ自分が「ちょっとやばい奴」だったのかが、少しずつわかるようになりました。

そして、その中にある自分の「狂気さ」は、「拘ることができる」という自分にしかない「強み」でもあるのだと、橋本先生からは教えていただきました。私が学園祭で取り組んだ活動から、それを見出してくださったようです。

現在は、そんな自分の「ちょっとやばい奴」のには、良くない所も多くあるので、しっかりと改善しつつも、その中の「自分の強み」になるところを、今後どう活かすのかを常に考えながら、日々を過ごしています。

私がここで、自分の「ちょっとやばい奴」に気づけたのは、ゼミ生のみんなが教えてくれたからです。ゼミが今までよりそういうことが言える距離感に縮まったのもありますが、それ以上にゼミ生の優しさがあるのだと思います。

同時に、それが「自分の強み」になることを教えてくれたのも、橋本先生のおかげでした。

これは、マイノリティの方の弱み(コンプレックス性)を、「超福祉展」を介して「魅せる」ものとして発信した田中さん及びピープルデザイン研究所の活動も共通している部分があるのではないでしょうか?

もちろん、マイノリティと呼ばれる方々のコンプレックスと、普通の人たちが抱えているコンプレックスは違う種類だと思います。前者の方が、周りから理解してもらえないことが多かったり、望まずにそうなってしまったなど、厳しい環境を経験されている方が多いと思います。また、後者については、自身で気を付ける必要もあることです。

ですが、田中さんの活動の中にある「弱み(コンプレックス性)を強みに変えることができる」という点は、マイノリティに属さない人でも、その点は共通のものであると思います。

もしかしたら、この記事を読んでいる人の中には、まだ自分の弱み(コンプレックス性)に苦しんでいる人もいるかもしれません。転勤の中で育った、とっても不器用など、様々な要素があると思います。ですが、転勤族であれば「全国に交友関係が広い」。とっても不器用なら「一つ一つのことを丁寧に行うことができる」という強みが隠されているはずです。

自分が持っている「弱み(コンプレックス性)」は、活かす場所によっては、自分の最大の強みになるかもしれない。

これを心にとどめておく事で、「アタリマエ」を揺さぶる時に、より良い方向に繋がると思います。そして、ピープルデザイン研究所が発信したい「混ざり合う」という根幹の考えは、こういうことではないかと私は思います。

まとめ~2回目のカフェゼミで得られたもの~

今回で2回目のカフェゼミ。

今回は「アタリマエ」だと思っていたことが、実は改善できるものだったということを感じられるお話を聞けました。

ですが、今回のカフェゼミ「アタリマエ」を揺さぶる経験はもちろん、その先として、「だからこそ実現できること」について考えさせられました。

「アタリマエ」を揺さぶることで、より良い方向に繋がるかもしれない。-

その「アタリマエ」は、今回の話で言うと、「弱み(コンプレックス性)」は「隠す」ものではなく、「魅せる」ことができるものであるという考えに結びつけることもできました。

そう思うことで、脱予定調和式の「カフェゼミ」で学ぶ意義は、より深いものになり、ダイバーシティ社会への理解が大きく深まるのではないでしょうか。

そして、マイノリティの方の気持ちに、少しでも寄り添えるきっかけになるのではないかと思います。

2回目の参加にして、新たな考えを得られたカフェゼミ。

次の機会でもまた参加しようと思います。

執筆:橋本ゼミ11期生 三宅央二郎

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